小倉ヒラクの「発酵トラベルノート ~旅と醸しのおたのしみ~」

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【第33回】フィンランドでハードサウナをキメた後に飲む最高のドリンクは…?

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小倉ヒラク
発酵デザイナー
「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、東京農業大学の醸造学科研究生として発酵を学びつつ、全国各地の醸造家たちと商品開発や絵本・アニメの制作やワークショップをおこなっている。『てまえみそのうた』でグッドデザイン賞2014受賞。自由大学や桜美林大学等の一般向け講座で、発酵学の講師も務めている。2015年より新作絵本『おうちでかんたんこうじづくり』とともに、「こうじづくり講座」を全国で展開中。著書『発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ』(木楽舎)が絶賛発売中!

味噌汁飲んでますか?

発酵デザイナーの小倉ヒラクです。

 

こないだフィンランドの首都、ヘルシンキへ行ってきました。目的はもちろん、本場のサウナをハードにキメるため…!

 

ということで今回はサウナにまつわる話をしようではないか。

 

***

 

サウナは「道」である。

ここ数年、サウナカルチャーが盛り上がっています。

 

漫画家タナカカツキさんの著書『サ道』を聖典として、サウナの快楽を極めんとするサウナー(サ道の探求者のこと)が急増中。

 

僕もその例に漏れずサウナに魅せられ、出張に出たらまずサウナ付き銭湯を探し、ビジネスホテルに泊まるよりもむしろカプセルサウナに泊まってサウナ三昧!

 

ついには「サウナ接待」と称して、ビジネスミーティングの場所をサウナに指定し、取引先とサウナ室で蒸されながらビジネス交渉を行うまでに。

 

ヒラク「ではこの条件で取引成立ということで…」

 

取引先「ちょっと頭冷やして考えたいので水風呂行きましょう」

 

(水風呂へ移動)

 

ヒラク「いや〜、マジで気持ちいいですねえ。」

 

取引先「これはたまりませんねえ…。ところでさっきの条件ですがちょっと難しいかもしれ…」

 

ヒラク「ちょっと外出て、外気浴しませんか?」

 

(露天の休憩所に移動)

 

ヒラク「蒸されて冷やしたあとに、風を感じる!これがサウナの醍醐味!」

 

取引先「ああ〜ととのってるゥ〜!!」

※心身ともにピースフルになっている状態

 

ヒラク「さっきの条件でいっちゃいませんか?」

 

取引先「ああ〜もう〜いいですよ〜!わっはっは〜!」

 

 

…というように、健やかな感じで交渉事が進むんだね。
健康志向のビジネスマンの皆様、接待は飲みよりサウナだ!

 

 

さて。こんな感じでサウナは最高に気持ちいい。

 

かつては銭湯の一角の狭い部屋でおじさん達が汗だくで蒸されているのを見て「何かの罰ゲームかな?」としか思えませんでしたが、自分がサウナおじさんと化してみると、

 

「サウナ最高〜!このEARTH(ほし)の生きとし生けるLIFE(いのち)を抱きしめたい〜!」

 

と叫び出したくなるほどの快楽がそこにあることを体感するわけだ。サウナは罰ゲームではない。風呂上がりのビールを美味しくするための準備運動でもない。

 

※「サウナで蒸される→水風呂で冷える→沐浴で風を感じる」のサイクルを何度も繰り返すと至高のハッピー状態が訪れて慈愛の気持ちに満ちあふれてきます。

 

サウナそれ自体が快楽であり、現代における至高のマインドフルネスなのであるよ。

 

***

 

本場フィンランドサウナをキメる!

それでは冒頭の旅の話へ。

 

フィンランドといえばサウナの本場。サッカーの本場といえばブラジル、カレーの本場といえばインド、不埒な恋の本場といえばフランスぐらいのレベルでフィンランドこそがサウナの聖地…!これは行くしかな〜い!!

 

ということで。バルト三国のエストニアとリトアニアに行く用事に急遽「フィンランドでサウナをキメる」というタスクを盛り込むことにしたんだYO!

 

で、いざ首都ヘルシンキに行ってみたら、確かに街のそこここにサウナが。まず僕が泊まったごくフツーのローカルエコノミーホテルに当然のようにサウナ室がついている。

 

さっそく着いた日の夕方にサウナ室にいってみると、地元の人たちのサウナリテラシーに驚愕!

 

まずサウナ室が暗い!

 

そして日本でよくある謎のヒーリング系BGMもテレビもない。ストイックに蒸されるしかないの本気仕様。そしてサウナを温めるストーブの前に必ず「ロウリュ奉行」がいるんですね(お客さんのなかでロウリュに自信がある人がストーブの前の特等席に座る)。

 

※ロウリュ:ストーブの上の石に水をかけて水蒸気を発生させ、身体の表面に熱波を感じさせるテクニック。初心者はこの熱波をくらうと気絶しそうになります。

 

このロウリュ奉行が容赦なくドバドバ〜ッ!と水をかけまくってサウナ室中に熱波を充満させる。

 

最初あまりの熱さにロウリュ奉行おじさんに「アツい!死ぬ〜!」とヘルプの視線を送ったところ「なんだ?まだ熱波足りねえのか?しかたねえなあ」と更に追い熱波がきました。

 

同席の他のローカルメンバーはみんなロウリュの波状攻撃をものともしないハードサウナー揃い…! 強い…!

 

なんとか10分弱くらい熱波地獄を耐えしのぎ、超冷水シャワーを浴びるのですが、これがとんでもなく気持ちいい!そして半野外の休憩スペースで静かに座っていると、

 

 

やってくる…

 

「ととのいの天使」の福音が…!

 

今までに経験したことのない熱波の嵐!からの凍てつく冬の北欧ウェザーの急速冷却…!

 

メンヘラ女子から熱烈にキス&ハグされた直後に突如罵詈雑言浴びせられる的な極端な振れ幅の快楽が僕の全身を支配し、もはや俗世のことは何も考えられない。ただ今自分がこの世界に存在しているというありがたさに全身を浸す悦び。

 

これが…マインドフルネス!

 

これが本場のフィンランドクオリティなのか〜!!

 

 

と初日から衝撃を受けたので、翌日はホテルの近所にあるプール場へ行ってみました。

 

サウナをキメた後に冬の凍結したプール場をパンツ一丁で走り回るという魅惑のアトラクションに挑戦してみたんですが、朗らかな北欧のガールズ&ボーイズがキャッキャしているリア充っぷりに極東から来た発酵おじさんは耐えきれず、すぐホテルに撤退してまたローカルおじさん達とロウリュ天国をキメました。

 

 

パブのビールのラインナップが渋い理由

ととのった後の楽しみは、もちろんパブでのビール。

 

本場なわけなので、さぞやアフターサウナ・オリエンテッドなビールラインナップが並んでいるに違いねえ…!と期待して街場のパブに駆け込んでみたらば、ポーター(スタウト)やセッション系のエールビールなど、渋めなラインナップのローカルビールがメインでオススメされていました。

 

※ポーター(スタウト):ローストした麦芽で醸す黒くてもったりしたビール。日本で有名なのはギネスの系譜ですね。

※セッション系のエール:炭酸とアルコール度低めの、香りを楽しむ穏やかなビール。僕のめっちゃ好みのクラフトビールのスタイルのひとつ。

 

 

「えっ、どういうこと?サウナ上がりは喉越しのいいピルスナー系ビールをグビグビ〜ッ!って感じじゃないの?」

 

※ピルスナー系:チェコ系の爽やかなラガービールのこと。日本の大手メーカーの主要銘柄はだいたいこのスタイル。代表格はアサヒスーパードライとか。

 

と不思議だったんですが、3回目のサウナで本場スタイルに慣れ始めた時にその謎が解けたんだよ。

 

本気で気持ちいいサウナのお供は、水がいちばん!

 

熱波を浴びまくり、かつドライな北欧の気候で沐浴しているとどんどん身体から水分が抜けていくので、サウナ中に何か飲まないと脱水症状になる。

 

なので、サウナ後のビールを待ちきれずに休憩室で水を飲むことになるのだが、これが最!!高!!!にウマい〜!!!!

 

ヨーロッパではなかなかお目にかかれない中硬水(軟水よりもやや硬め・ミネラル多めの水。日本酒づくりに適しているとされる)が身体のなかスルスルスル〜ッと染み渡っていく悦びよ…!サウナの快楽にフォーカスしたかったら、サウナ中に水を豪快に飲むのが正解!

 

ということで。サウナを出る時はある程度喉は潤っているんだね。
だからパブに行くときはグビグビ系のビールより、しっとり系のビールをさ、海鳥の鳴き声を聴きながらしみじみ飲むのがいいんだよ…!

 

そうやって北欧のサウナおじさんは、だんだんムーミン体型になっていくのさ…!

 

 

それでは、ごきげんよう。

 

 

【追記】僕が飲んだなかで印象的だったフィンランドのローカルビールは、LAPIN KULTAのセッションエール。控えめかつセンスフルで、しかもクラフトの温もりもある…というフィンランドデザインのような素敵なビールでした。