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野口啓代選手×楢﨑智亜選手 | 【第2回】〇〇の筋肉も使う!?フリークライミングの知られざる世界と、勝負強さを生む秘訣

野口啓代選手と楢﨑智亜選手
  • 野口啓代選手
    野口啓代選手
    1989年、茨城県生まれ。フリークライマー。11歳からクライミングを始め、1年後の全日本ユース選手権では中高生がいるなか見事に優勝。19歳のとき、フランスで行われた『ボルダリング・ワールドカップ』にて日本人女性で初優勝を飾り、以降26歳になる2015年まで通算18勝を達成し、スポーツクライミング界における、「絶対女王」とも呼ばれている。好きな味噌汁の具は、なすとしじみ。
  • 楢﨑智亜選手
    楢﨑智亜選手
    1996年、栃木県生まれ。野口啓代選手と同じく11歳からクライミングを始め、ジュニア、ユース時代からトップ選手として活躍。高校卒業後にプロへ転向し、2016年に行われた『IFSCボルダリング・世界選手権パリ大会』では弱冠20歳の若さで日本人初優勝を飾った。好きな味噌汁の具は、わかめ。
野口啓代選手楢﨑智亜選手

アマノ食堂に訪れる、お客さんの“おいしいお話”をお届けする「お客さん対談」。ゲストは、日本が世界に誇るプロフリークライマー・野口啓代選手と、楢﨑智亜選手です。

旧知の仲だからこそ!の素敵な関係が垣間見えた第1回に引き続き、今回は、普段のトレーニングや大会の舞台裏を深堀りします。本番で“勝負強さ”を発揮するためには、日々の努力と知られざる秘密が(!?)その驚きの内容が明らかに~!

 

—急な斜面を登り切るためのパワーに加え、冷静に手順を考えながら登るための判断力と集中力が必要なクライミング。プロフリークライマーたちは普段、どのようなトレーニングをしているのでしょうか?

野口啓代選手と楢﨑智亜選手

基本、トレーナーと1対1のトレーニングで、自分の苦手を克服するメニューが多いです。ホールド(※1)を持つことが好きなので登るためのトレーニングはしてきたんですけど、それ以外の運動や体作りをしてこなかったので、今は下半身を中心に力を入れています。

※1 壁の表面に設置された突起物

下半身を鍛えると、骨盤やお尻周りの筋肉が発達するから、全身がすごく安定しますよね。

そうそう。子供の頃は力もなかったし…。重心移動するのも、バランス感覚で登っていたから、あまり意識して力をつけようって思ってなかったんですね。

特に女子は、ワールドカップの課題(※2)の傾向が変わってきたんですよ。前よりも派手な動きを求められるようになって。テクニックだけじゃなくてフィジカルも備わっていないと、クリアできない課題が多くなった気がします。

※2 壁にあらかじめ定められた、スタートからゴール地点までのコース。複数の課題を、各選手が1課題ずつ制限時間内に挑戦する。大会では、最終的に登れた課題数で競い合う。

野口啓代選手

体を支えながら動くスポーツ

「体作り」は基本!

(野口啓代選手)

そうだね。特に女性の場合は、しっかり体作りをしないとケガをしやすいですね。その予防のためにもトレーニングがすごく大切。クライミングって体の深層部にある筋肉をたくさん使うし、体を支え続けながら動かないといけないし。

僕は気持ちよく登るのが好きで、どちらかっていうと耐え忍ぶクライミングが苦手…。でも、やっぱり大会とかでは普段の癖が出ちゃうので、最近は、「耐える系のトレーニング」をしています。ゆっくりと重心移動することを意識して動く感じの。今はもう、体全身を鍛えないとワールドカップや世界では勝てないんですよ。

本当にそう!使わない筋肉がないから、上半身と下半身、両方強くないといけなくて。それに加えて、自分にしか備わっていない武器もないと勝てない。

 

楢﨑智亜選手

顔や首も使う!?

最後まで諦めずに全身で勝負

(楢﨑智亜選手)

顔や首も使いますよね「もう限界だ!」って思った時って、顔の表情ひとつで出せる力が変わってきません?

わかる!歯を食いしばったりして。ちなみに、どんな顔するの?

やりたくない!今やるのはちょっと恥ずかしい(笑)。言葉で説明するなら顔をクシャッとする感じ…?そうすると自然と力が入る。みんな、人に見せたくないだけでこっそり使ってるんじゃないかな〜。

あはは。私は、あまり意識して顔は使ってないけど…必死で登った時の写真を後で見ると、結構ヤバい顔してることはある(笑)。

意外とみんな気付いてないけど、「顔を使う」ってすごく重要ですよね。

 

—“顔や首”まで使って登っていたとは驚きですね!そんな全身で戦うスポーツ界でプロとして活躍するにあたり、お2人が日常生活で気をつけていることは?

野口啓代選手

変な癖をつけないように

日常生活でも姿勢良く!

(野口啓代選手)

常に姿勢は気にしてますね。姿勢が悪いと変な癖が出ちゃうんです。あと、前は足を組む癖があったんですけど、左右の足に差が出ちゃって…。そうなるとトレーニングで直さないといけなくなるので、普段から足を組まないようにしています。智亜くんは前よりも食事を気にしてない?昔は、お菓子ばっかり食べてたよね。

駄菓子は好きでした。一時期食べるのをやめたら体重が5キロも落ちたことがあって。あと、普段からあまりじっとしていたくないです(笑)。体が固まってしまう感じがするからとにかく動いていたいんです。お風呂も好きで、今日も朝風呂1時間ぐらい入ってきました!

お風呂に長く浸かるアスリートって多いよね。

そうかも!温泉もよく行きます。啓代さんは普段から食生活も気にしてますか?

大会前はすごく気にするかな。体重と筋肉のバランスがすごく大切!クライミングって特に体の重さの影響が大きい種目だから、グルテンフリー(※3)もうまく取り入れて調整をしています。

※3小麦や大麦あるいはライ麦、オート麦などの麦類に含まれているタンパク質の一種を使わない食事法

それ、弟(フリークライマーとして活躍中の楢﨑明智選手)もやってます!僕は食事というか…体のキレが変わってくるから太りたくはないです。

あと、クライミングって手をすごく使うじゃない?もともとコーヒーがすごく好きなんだけど、カフェインって発汗効果があるらしくて、大会が近い時は控えめにするように意識してますね。

 

楢﨑智亜選手

登っている時は集中力が大切!

一番は「ストレスを溜めないこと」

(楢﨑智亜選手)

あと、意外と僕が気をつけているのは、「あんまり物事を深く考えないこと」。

それって、意識して気をつけることなの?

練習でいつも疲れちゃうから、それ以外でストレスをあまり感じないようにしようと思って。ストレスが溜まってると練習に集中できなくなるから、心掛けてます。

なるほどね!その気持ちすごくわかる。集中力って大事。

他のことを考えると、いい登りができないですよね?

そうそう。疲れてるだけで、落ち方もちょっと怖くなってこない?寝不足の日とか絶対に登れない。

次の動きが全く思いつかなかったりするので、睡眠やリフレッシュって…こうやって改めて話していると大切だってことに気づきますね。

 

—トレーニングだけでなく生活習慣や食事に気をつけるなどの日々の努力が、お2人の今の活躍を支えているんですね!それでは、いざ本番に挑む際に“勝負強さ”を発揮するコツや意識して取り組んでいることはありますか?

大会前は、心の中で「俺が最強!」って言い聞かせてます。「俺ならできる!」みたいな感じで。自信は大事です。

知らなかった!けどわかる!私も「大丈夫、大丈夫」って心の中で言い聞かせたりするなぁ。あと、呼吸を意識したり。

楢﨑智亜選手

「自分ならできる!」

気持ちを高めて、本番に挑む

(楢﨑智亜選手)

実は八王子(※4)の時、課題が終わるごとにトイレに行って、鏡に映る自分に向かって言い聞かせてたんです。

※4 今年5月に東京・八王子で開催されたボルダリングワールドカップ

漫画の登場人物みたいだね。それって前からやってたの?

さすがに鏡の前で言い聞かせたのはその1度だけです。心の中ではそれまでもやってたけど(笑)。でもこれが結果的に、自分を客観的に見れて良かったかもしれません。

どんな表情だったのか気になる。その時の顔、やってみてよ!

ヤダヤダヤダ。でもね、本当に真剣な顔です(笑)。

そういえば…私も大会の朝に鏡で自分の顔を見て「今日いけるな!」って思うこと、たまにあるなぁ。

僕は、毎日同じウォーミングアップをやってるから、それで自分の調子がわかったりします。同じメニューを続けたほうが、その違いに気付けるし。

 

野口啓代選手

「最後まで諦めない!」

結果を変えるのは自分次第

(野口啓代選手)

最終的に自分の気持ち次第で、結果を変えることができるよね。

諦めなければ意外とできたりしますよね。体が限界でも、気持ちさえあれば、手から先がまだ頑張ってたりするし。

「絶対に手を離さない!」みたいな気持ちだよね。大会の合間でも、選手ごとに時間の過ごし方に違いがあって面白いよね。ずっとヘッドフォンで音楽聴いて超集中していたり、もらった手紙を読んでる選手もいたり…。

フリークライミングって完全に個人競技だから、体作りだけじゃなくて気持ちを高めることも大事なトレーニングの一つかもしれないですね。

(つづく)

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撮影協力/クライミングジム「Fish and Bird」東陽町

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