真野遥の「やさしい発酵図鑑」

mano_prof

【やさしい発酵図鑑vol.1】ドレッシングやお肉の漬け込みに!塩代わりに使える「塩麹」

mano_prof
真野遥
発酵料理家
ものづくりに興味を持ち、「一番身近なものづくりは料理である」と食の道へ。全国の酒蔵、味噌蔵など醸造所を訪ねて周り、訪問した酒蔵は60件以上。現在は、日本酒に合う発酵料理の提案を中心に、レシピ開発や執筆を中心に幅広く活動している。日本酒と発酵食品のペアリングが楽しめる料理教室も主宰し、参加者数は年間500名以上にのぼる。

はじめまして、発酵料理家の真野遥です。

今月から、アマノ食堂連載を担当することになりました! 発酵食品を楽しく学んでいただけるコラムをお届けしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

まずは、簡単に自己紹介から。私は「発酵料理研究家」として”日本酒に合う発酵食料理の提案”を中心に、レシピ開発や執筆などの活動をしており、日本酒と発酵食料理をペアリング形式で学べる料理教室も主宰しています。

 

mano_2005_01

肩書きの通り、発酵食品が大好き。 私が発酵食品にハマったきっかけは、ズバリ日本酒です。

元々、自他共に認める大のお酒好きだったのですが、6年ほど前に日本酒に開眼し、全国の酒蔵さんを巡りながら学びを深める中で、発酵の面白さに出会いました。

 

「日本酒って米と水だけで造られているのに、果物の香りがしたり、酸味が強いものがあったり、色々な味がして面白いな。発酵ってすごい!」という、シンプルな好奇心がきっかけです。

 

日本酒や発酵に夢中の私ですが、この連載では、意外と知らない発酵食品のあれこれをご紹介していきます。近年注目を集め始めている発酵食品。納豆やヨーグルトなど身近なものから、塩麹、ナンプラーなど聞いたことはあるけど使い方がわからないというものまで。このコラムを読み終えた頃には、キッチンに新しい発酵食品が仲間入りしているかも?

 

どんな料理にも使える万能調味料!『塩麹』


今回のテーマは「塩麹」。数年前にブームが巻き起こり、一躍話題となった塩麹。私は毎日のように料理に使っています。

 

しかし、少し前に見たテレビ番組では、「冷蔵庫の片隅に眠っている調味料No.1」として紹介されており、愕然としました。

なぜなら私は、「塩麹ほど万能に使える発酵調味料は無い」と考えているためです。

 

ということで、まずは塩麹の基本から、鼻息荒く紹介していきたいと思います。

 

■塩麹に含まれる「麹」の役割

塩麹とは、文字通り”塩と麹が原料の調味料”なのですが、「そもそも麹って何?」と思われる方も多いかと思いますので、まずは麹から説明していきましょう。

 

麹とは、蒸した穀物に麹菌を繁殖させたもの。麹菌はカビの一種なのですが、日本人は古来から毒性が無いものを選抜して、様々な食品作りに利用してきました。

mano_2005_02

日本酒はもちろんのこと、味噌、醤油、みりんなど、日本人に欠かせない発酵食品には必ずと言って良いほど麹が使われています。それはなぜかというと、麹には沢山の『酵素』が含まれているからです。

 

酵素とは、タンパク質で構成された触媒(反応を促進させる物質)の一種であり、ハサミのようなもの。酵素には様々な種類があり、それぞれに切る相手が決まっています。

 

麹の持つ酵素として代表的なものが、以下の2種類です。

①デンプン分解酵素(アミラーゼ)…デンプンをブドウ糖に分解する酵素

②タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)…タンパク質をアミノ酸に分解する酵素

 

人気の『麹甘酒』は、デンプン分解酵素の働きにより、米のデンプンがブドウ糖に分解されることで甘味が生まれています。

 

一方のタンパク質分解酵素は、分かりやすいところでは味噌。味噌の原料である大豆は、そのままではさほど旨味が感じられませんが、麹が加わり大豆のタンパク質がアミノ酸に分解されることで旨味が生まれます。

 

■ドレッシングやお肉の漬け込みに!塩麹の使い方

 

そして、今回の主役である『塩麹』は、米麹・塩・水を混ぜ合わせて熟成させた、麹をそのまま料理に活用できるシンプルな調味料です。

 

元々、塩麹に類似する調味料は全国各地に存在し、特に東北地方の麹で漬ける「三五八漬け」は有名です。その後、麹の消費量が減っている現代において、今どきの日本人の暮らしに合った麹のスタイルを作ろうと、大分県にある麹屋さん

が江戸時代の文献を元にレシピを復活させ、「塩麹」ブームが起こりました。

 

それでは具体的に、塩麹はどのように料理に使えばいいのでしょうか? 塩麹は、一言で表現すると「旨味のある塩」。私は塩代わりに毎日のように使っています。

 

こんな使い方がおすすめ!

・塩麹とオリーブオイルとレモン汁を混ぜてドレッシングに

・スープやパスタの味付けに

・炒め物の味付けに

・野菜を塩麹で揉んで浅漬けに

・鶏肉の唐揚げの漬け込みに

 

使い道を上げたら枚挙にいとまがありません。

ただし、1つだけ注意点が。酵素は、良くも悪くも食材のデンプンやタンパク質を分解してしまうので、ポテトサラダに塩麹を入れると、じゃがいものデンプンが分解されてドロドロになるので、気をつけましょう! ハンバーグに入れる場合も、肉に混ぜ込んで長時間置いておくと、肉が溶けてドロドロになってしまうのでご注意を。

 

自家製「塩麹」に挑戦してみよう!

塩麹は、今やスーパーでも気軽に手に入れることができますが、じっくり時間をかけてお家で作ってみるのも楽しいですよ!

 

【材料(作りやすい分量)】

米麹…200g

水…200ml(乾燥麹の場合は300ml程度)

塩…60g

 

【作り方】

1.清潔なボウルに麹と塩を入れ、よく混ぜ合わせる。

(麹や塩が固まっている場合はほぐしてください。)

 

2.ボウルに水を入れ、よく混ぜ合わせたら、清潔な保存容器に移す。

1日1回、清潔なスプーンでかき混ぜ、夏場の暖かい時期なら1週間ほど、冬場の寒い時期なら2週間ほどで完成。完成したら冷蔵庫で保存しましょう!

 

<塩麹の発酵のメカニズム>

麹の酵素が塩水に溶け出して活性化することで、米のデンプンやタンパク質などが分解され、様々な成分が生成されます。それにより、甘味や旨味、コクなどが生まれます。

 

<完成の目安>

・麹が指で簡単にすり潰せる柔らかさになっている

・塩のカドが無くなり、まろやかな塩味と旨味が感じられる

・ほのかに甘味が感じられる

 

<賞味期限>

冷蔵保存すれば、基本的に塩麹は悪くなりません。むしろ、冷蔵庫の中でじっくり熟成させた方が、より味が深まり美味しくなっていきます。私は冷蔵庫で半年〜2年ほど熟成させることも。

 

※熟成させると色がだんだん茶色っぽくなりますが、これはメイラード反応(アミノ酸と糖が結合して起こる反応)による褐色変化ですので、品質には問題ありません。

 

塩麹を使った簡単レシピ「やみつき塩麹キャベツ」

塩麹を使った簡単レシピをご紹介!  麹の特長を活かしたあえてシンプルなレシピを選びました。キャベツを塩、ごま油、にんにくなどで調味した、居酒屋さんや焼肉屋さんの定番おつまみ「やみつき塩キャベツ」を今回は、塩麹バージョンで。塩麹を使うことで、麹の優しい旨味が効いた「やみつき塩麹キャベツ」が作れます!

 

【材料(2人分)】

キャベツ…1/4個

塩麹…大さじ1

ごま油…大さじ1と1/2

白ごま…小さじ1

にんにく…小さじ1/2

粗挽き黒胡椒…適量

 

【作り方】

1.キャベツを水洗いし、食べやすい大きさにちぎる。

 

2.ビニール袋に1のキャベツと全ての調味料を入れ、よく振って味をなじませたら完成。

 

普段のおかずや副菜はもちろん、お酒のおつまみにもピッタリ。一緒に合わせるお酒は、キリッと冷やした辛口の日本酒にもおすすめです。これからの季節、「三千盛 れいじょうドライ」(三千盛/岐阜県)のような、夏季限定の冷涼感のある日本酒と相性抜群ですよ!

 

ある麹屋さんの言葉で、印象に残っている言葉があります。

「麹は、料理の味を麹味にするのではなく、食材の味を引き出してくれる存在。だから毎日、飽きることなく使える」

 

麹を使い続けるほどに、この言葉の意味が分かってくるような気がします。まずは塩の代わりに気軽に使い始めてみて、塩麹のある生活を楽しんでみてはいかがでしょうか?