真野遥の「やさしい発酵図鑑」

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【やさしい発酵図鑑vol.3】暑い日に取り入れたい!「お酢」のひみつとおいしい活用法

Bottles with different kinds of vinegar and space for text on wooden background, flat lay
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真野遥
発酵料理家
ものづくりに興味を持ち、「一番身近なものづくりは料理である」と食の道へ。全国の酒蔵、味噌蔵など醸造所を訪ねて周り、訪問した酒蔵は60件以上。現在は、日本酒に合う発酵料理の提案を中心に、レシピ開発や執筆を中心に幅広く活動している。日本酒と発酵食品のペアリングが楽しめる料理教室も主宰し、参加者数は年間500名以上にのぼる。

こんにちは、発酵料理家の真野遥です。今回の「やさしい発酵図鑑」のテーマは、夏にぴったりな発酵食品「お酢」です!

 

食欲が減退しがちな夏場にぴったりのお酢は、世界に様々な種類が存在します! 身近なものから、ちょっと変わったものまで、知って得するお酢の豆知識をご紹介します。

 

そもそもお酢はどうやって造られている?

 

お酢とは、穀物や果実などを原料としてお酒を造り、それを酢酸菌で発酵させて造る、酢酸を含む液体調味料です。酢酸菌がエチルアルコールに作用して酢酸が生成されることによって、酸っぱくなります。

 

何を原料にするかで種類が異なり、例えば、米を原料にすれば「米酢」、りんごを原料にすれば「りんご酢」、ぶどうを原料にすれば「ぶどう酢(ワインビネガー)」になります(種類については後ほど詳しく説明いたします)。

 

そのため、日本の代表的なお酢である米酢造りの最初の工程は、米の酒、つまり日本酒を造るところから始まります。

 

途中までは、普通の日本酒を造るのとほとんど変わりがなく、最後にもろみに「種酢(酢酸菌を含んだお酢)」を加えて酢酸菌を移植することで、お酢への変貌が始まります。種酢を加えて2日ほど経つと、酢酸菌がタンクの表面を覆うように増殖して酢酸発酵が始まり、3〜4ヶ月ほどかけてお酢へと姿を変えていきます(機械で空気を送り、温度を上げ、1日で発酵を終える速醸法もあります)。

 

 

豆知識「種酢」の役割
「種酢」は、各蔵で創業以来継ぎ足しながら代々受け継がれていることが多く、種酢こそがその蔵の味を決める最も重要な存在であると言われています。あるお蔵さんの話によると、他社の種酢でお酢を造ろうとしたらうまく発酵せず、自社の菌まで弱ってしまい、復活させるのに苦労したことがあったそうです。目に見えない菌たちの、偉大な力を感じますね。

 

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酢酸発酵中の醪(もろみ)
(写真出典:河野酢味噌製造工場HP)

 

以上のように、米酢に限らず全てのお酢は、『お酒を造る工程(アルコール発酵)』『酢酸菌で発酵させる工程(酢酸発酵)』という、二つの発酵の過程を経るのが基本となり、また時間をかけて熟成させるのも特徴の一つです。

 

「酢飯」に欠かせない! 日本でのお酢の成り立ちと種類

Pouring Apple Cider Vinegar into a Measuring Cup

日本のお酢の歴史

のあるところに酢あり”と言われるように、日本最古のお酢は、米の酒(日本酒)から造る「米酢」。中国から酒の醸造技術が伝わるとともに酢造りも始まり、飛鳥時代〜平安時代にかけては、米酢に関する記述が多く残されています。

 

当時は酢を造る目的で米酢を造ることもあれば、一度酒にしたものが意図せず酸っぱくなってしまったものを「苦酒(からさけ)」と呼び、食酢として利用したこともあったそうです。

 

室町時代になると、酢の名産地が全国に広がり、江戸時代にはますます多く消費されるようになりました。…ここで外せないのが、「酢飯」の話です。

 

江戸の町で握り寿司が流行り出した頃、ちょうど時を同じくして、愛知県半田市で、酒粕を原料とする革新的な「粕酢」が生まれ、これが酢飯に最適であると評判になりました。折しも江戸では日本酒の消費量が増え、副産物である酒粕が大量に出ていたため都合が良く、安価で良質なお酢が普及することになりました。

 

日本で造られるお酢

このように、日本のお酢は「米酢」がベースとなっており、その他にも「粕酢」や「穀物酢」などが生まれ、後に「合成酢」のような、酢酸を薄めて味を整えたものが生まれたり、現在ではりんご酢などの果実酢も造られています。

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ちなみに、「黒酢」は玄米を原料にした米酢であり、特に鹿児島県福山町周辺で造られる黒酢は「壺酢」と呼ばれ、中国から伝わった原始的な製造法であると言われています。アミノ酸を豊富に含み、長期間熟成させることにより黒色となり、香りが高くまろやかな味わいが特徴です。

 

人類最古の調味料! 世界での成り立ちと種類

Flaschen mit Essig und Öl

世界のお酢の成り立ち

お酢は、人類が造った最古の調味料と言われており、紀元前5000年頃にはすでに、バビロニア(現在のイラク南部)に食酢があったとされています。当時は、ナツメヤシや干しぶどうからお酢が造られていたそうです。

 

その後、ヨーロッパで酢造りが発達し、食用としてはもちろん、医学者が酢の抗菌作用に注目し、万能薬として用いたとも言われています。

 

さらに、ワインや蜂蜜酒、ビールなどを原料にしたお酢が酢漬けやドレッシングなど料理に活用され、用途も種類も多様化していきます。

 

なお、お酢に含まれる酢酸の生成が微生物によるものであると分かったのは19世紀。14世紀にはすでに大規模なお酢の生産が始まっていたにも関わらず、発酵の原理が分かったのは、つい最近のことなのです。

 

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多種多様!味わい豊かな世界のお酢たち

どんな素材でも、お酒にすれば基本的にはお酢が造れるため、世界には様々な種類のお酢が存在します。代表的な3つのお酢をご紹介します。

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<豆知識!世界のちょっと変わったお酢>
東南アジアには特に珍しいお酢がたくさん。ココナッツから造られる「ココナッツビネガー」や、パイナップルから造られる「パイナップルビネガー」、ヤシから造られる「ヤシ酢」など、多種多様なお酢が存在します。

 

 

お酢を料理に使ってみよう!おすすめの使い方とレシピ

 

酸味があり、さっぱり味のお酢は、料理に使うとこんなメリットがあります。

 

料理にお酢を使うメリット
・殺菌作用による保存性の向上
・減塩効果
・食欲増進
・肉や魚の臭み消し
・れんこんやゴボウなどの食材の色止め
・肉を柔らかくする

 

日本でお酢を使う料理といえば、「酢飯」や「酢の物」をイメージする方も多いはず。お酢の良さを活かしたこんな使い方もおすすめです!

 

お酢の意外な使い方
・煮込み料理に加えて、お肉をほろほろに柔らかく。
・お好みのオイルと合わせてドレッシングに。
・麺ものに加えてさっぱりと。
・ゼラチンで固めてジュレにして、お刺身などにかけても◎

 

お酢でさっぱり!手羽元と夏野菜の黒酢煮込み

お酢でさっぱり!手羽元と夏野菜の黒酢煮込み

手羽元と夏野菜の黒酢煮込みのレシピ

今回ご紹介するのは、黒酢をたっぷり使った手羽元の煮込みです。煮込み料理にお酢を使うことで、肉が柔らかくなり骨離れも良くなります。中でも、今回は「黒酢」をチョイス。お酢ならではの酸味に加え、甘みがプラスされてまろやかで優しい味わいに。ご飯のおかずやお酒のお供にもオススメです。(料理監修 / 真野 遥)

材料

(作りやすい分量)

 

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・鶏手羽元 …6本

・小麦粉…適量

・米油(もしくは菜種油など)…大さじ1

・なす…1本

・ズッキーニ…1/2本

・パプリカ…1/2個

・ミニトマト…6個

・青じそ(千切り)…5〜6枚

 

<調味料 A>

・黒酢…100ml

・濃口しょう油…50ml

・みりん…50ml

・酒…50ml

・水…80ml

・砂糖…大さじ1

作り方

1

ズッキーニは2cm幅の輪切りに、パプリカは一口大に切る。 なすは縞模様に皮を剥き、乱切りにする。

 

手羽元はペーパータオルで水気を拭き取り、骨に沿って切り込みを入れる。両面に塩胡椒(分量外)をふり、小麦粉をまぶす。

POINT

切り込みを入れることで、骨離れが良くなります。

2

フライパンに米油を入れて中火にかけ、1の手羽元を皮目から焼く。

片面こんがり焼き色がついたら上下を返し、ズッキーニとパプリカ、なすを加え、こんがり焼けたら火を止める。

3

鍋に<調味料A>と2を入れて中火にかけ、煮立ったら落し蓋をして弱火で15分煮る。

4

へたを取ったミニトマトを加え、蓋をして1分加熱し、器に盛ったら青じそを添えて完成。
そのまま食べてもおいしいですが、一度冷ますと味がしっかり染みます。

 

 

\きょうの日本酒/

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香り高く、まろやかな酸味の効いた味わいには、「不老泉 山廃純米吟醸(上原酒造/滋賀県)」 のような、芳醇で酸味の効いた旨口の日本酒がおすすめです。

お燗にすれば、黒酢の染み込んだ鶏肉旨みをより強く感じることができますよ。

 

お酢は料理にコクを与えつつ、さっぱりとした風味に仕上げてくれますので、蒸し暑い今の時期こそ積極的に使ってみてくださいね!