真野遥の「やさしい発酵図鑑」

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【やさしい発酵図鑑vol.4】タイ料理だけじゃない!魚の旨味たっぷり「魚醤」のおいしい使い方

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真野遥
発酵料理家
ものづくりに興味を持ち、「一番身近なものづくりは料理である」と食の道へ。全国の酒蔵、味噌蔵など醸造所を訪ねて周り、訪問した酒蔵は60件以上。現在は、日本酒に合う発酵料理の提案を中心に、レシピ開発や執筆を中心に幅広く活動している。日本酒と発酵食品のペアリングが楽しめる料理教室も主宰し、参加者数は年間500名以上にのぼる。

こんにちは、発酵料理家の真野遥です。今回のやさしい発酵図鑑のテーマは「魚醤(ぎょしょう)」です!

 

魚醤と言えばナンプラーやヌクマムなどが有名ですが、実は日本にも様々な魚醤が存在することをご存知でしょうか?やさしい味わいのものから、ひとくせあるものまで、個性豊かな魚醤の世界をご紹介します!

 

 

ナンプラーで有名!「魚醤」はどうやって造られる?

 

魚醤とは、魚を塩で漬けて発酵させた調味料で、まさに“魚”で作る“醤油”のようなもの。醤油の場合は、麹菌の持つ酵素の働きで大豆が分解されますが、魚醤の場合は、魚が持つ酵素によって魚自体が分解されます。

 

数年ほど発酵・熟成させて魚がドロドロに溶けたものを濾して液状に仕上げますが、イメージとしては塩辛に近いものと考えてよいでしょう。

 

元々は、魚介類が豊富に獲れる地域において、食べきれない分の魚を塩漬けして保存したことから発展したと考えられており、魚醤のような調味料は世界各地に存在します。

 

中でも、魚醤の生産・消費ともに最も盛んなのは東アジア〜東南アジア。メコン川で獲れる豊富な淡水魚を原料に、タイの「ナンプラー」やベトナムの「ヌクマム」をはじめ、ラオスの「パデーク」、カンンボジアの「タクトレイ」、フィリピンの「パティス」など、様々な魚醤が造られています。

 

アジアにおける魚醤のルーツは中国にあるとされており、日本においては、弥生時代に「醤(ひしお)」の一種として中国から伝わり、各地で独自に発展していきました。

 

 

味や風味は様々! 日本の三大魚醤

 

日本では、秋田県の「しょっつる」、石川県の「いしる/いしり」、香川県の「いかなご醤油」が、三大魚醤と言われています(いかなご醤油は一度衰退して復活したものの、今なお希少な存在となっています)。

 

今回は、私が愛用している魚醤をご紹介します。

 

①しょっつる(秋田県)

ハタハタから造られる「しょっつる」は、全国的にも有名な魚醤です。

 

漢字では「塩魚汁(しょっつる)」と書き、まさに“塩漬けした魚の汁”であることが分かりますね。臭みが少なく、上品な旨味が特徴で、秋田の郷土料理「しょっつる鍋」には欠かせない存在です。

 

鍋物や汁物、煮物に使えば出汁いらず。クセがないので、サラダのドレッシングや炒め物、パスタなど、醤油代わりに幅広い料理に使えます。

 

②いしる/いしり(石川県)

よく似た名前ですが、「いしる」はイワシが原料、「いしり」はイカが原料の魚醤で、どちらも石川県で造られています。

 

「いしる」はクセが少ないため、醤油代わりになんでも使いやすく、「いしり」はイカの濃厚な旨味がたっぷり詰まっているため、鍋物や煮物などに最適です。

 

③鮎魚醤(大分県)

驚くほど臭みが無く、うっとりするような香ばしく深い香りがする「鮎魚醤」は、和食のみならず、イタリアンやフレンチにも活用したい極上の1本です。

 

オリーブオイルと相性が良く、私はマリネやカルパッチョなどに使うのがお気に入りです。

 

種類によって使い分けたい! 魚醤の使い方

 

魚醤は、いわば魚の旨味が凝縮したエキス。原料により風味が異なるため、種類ごとに使い分けると尚よいですが、しょっつる・いしる・鮎魚醤などのクセのないものは、まずは醤油代わりに使ってみるのがオススメです!

ただし、醤油よりも塩分濃度が高いので、分量を控えめにしてください。

 

クセのない魚醤のオススメの使い方

・そのままかけて

冷奴にかけたり、お浸しや煮物の味付け、肉や魚の漬け込みなど、醤油代わりに使えます。茶碗蒸しや卵焼きの味付けにもいいですね。醤油とは一味違う、魚醤ならではの仕上がりを楽しんでみてください。

 

・炒め物に

加熱すると風味が引き立つので、焼うどんや野菜炒めなど、炒め物に使うのもオススメですよ。

鮎魚醤で旨味たっぷり焼うどん

 

・鍋物の出汁に
魚醤は旨味が強いため、鍋物や汁物に使うと出汁代わりになります。これからの季節、鍋物に是非ご活用いただきたいです。

 

もちろん、和食のみならず、カレーやパスタ(特にトマトベースのもの)の隠し味や、チャーハンに使うのもオススメです。バターとも相性がよいため、イカやホタテのバター魚醤焼きなどは、たまらないおいしさですよ!

 

独特の風味のある魚醤のオススメの使い方

 

・煮込み料理やスープに

ナンプラーのような東南アジアの魚醤や、いしりのようなイカの風味がしっかりと効いた魚醤は、煮込み料理や鍋物などに使うと、独特な風味を活かすことができます。旨味を活かして、ラーメンのスープに使うのもオススメです。

 

・魚介ベースの料理に

パエリアやブイヤベースなど、魚介ベースの料理に使うと、さらに旨味たっぷりに仕上がります!

魚介のいしりパエリア

 

・酸味のある料理に

ナンプラーがエスニック料理には欠かせないように、独特の風味のある魚醤は、ガパオライスやグリーンカレー、ヤムウンセン(春雨サラダ)など、唐辛子の辛味やライムなどの酸味を効かせた料理に使うのもオススメです。にんにくや薬味など、香りの強い食材と合わせると、さらに食べやすくなりますよ!

 

下味とタレに魚醤を! 旨味たっぷり「しょっつるチキン」

下味とタレに魚醤を! 旨味たっぷり「しょっつるチキン」

「しょっつるチキン」のレシピ

今回は、鶏肉をしょっつるで漬け込んでこんがりと焼いた「しょっつるチキン」をご紹介します。タイの焼き鳥「ガイヤーン」をベースに、しょっつるでアレンジしました。お好みの魚醤で是非お試しください!(料理監修 / 真野遥)

所要時間
10
材料(2人分)

 

鶏もも肉…1枚(300g)

パクチー…1株

トマト…1/4個

スイートチリソース…適量

<調味料A>

しょっつる…大さじ1

砂糖…小さじ1/2

クミンパウダー…小さじ1/2
にんにく(すりおろし)…1かけ分
パクチーの根(みじん切り)…1株分

<調味料B>

しょっつる…小さじ1

砂糖…小さじ1

かぼす果汁(レモンやライムでもよい)…1/2個分

豆板醤…小さじ1/4

パクチーの茎(みじん切り)…小さじ1

作り方

1

鶏もも肉は余分な皮や脂や筋を取り除き、包丁で切り込みを入れて厚みを均一にし、フォークで全体を数箇所刺す。

ポリ袋に<調味料A>を入れ、鶏肉を入れて揉み込む。封を閉じて冷蔵庫で1晩置く(最低1時間)。

2

<調味料B>を混ぜてタレを作り、ココットに入れる。スイートチリソースもココットに入れる。トマトはくし形に切り、パクチーはざく切りにする。

3

1を常温に戻し、250℃のオーブンで20分焼く。食べやすい大きさに切り、2とともに器に盛る。

 

 

 

\きょうの日本酒/

日本で一番海に近い酒蔵”と言われる、向井酒造さんの「伊根満開(向井酒造/京都府)」は、古代米を使用した、ピンク色の甘酸っぱいお酒です。かわいらしい見た目ですが、これが不思議と、エスニック料理と相性抜群なのです!

 

しょっつるの旨味がじんわりと染み込んだ、パクチーとクミンの香りが広がる鶏肉に、かぼすの酸味としょっつるの風味が効いたタレがピタリとハマります。スイートチリソースと食べ比べてみると、また違った味わいが楽しめますよ。

 

冷酒〜常温〜熱燗と幅広い温度帯で楽しめる上、ソーダで割ったりレモンを入れたりしても、おいしくいただけます。

 

***

 

魚醤は、いわば酒の肴の代表格である「塩辛」を液状にしたようなもの。いつもの料理に魚醤を使うと、それだけでお酒が進むおつまみに変貌する、魔法の調味料と言っても過言ではないと思います。

 

お酒を飲む方も、飲まない方も、海の恵みがギュッと詰まった魚醤を、日々の料理に是非お気軽に取り入れてみてくださいね。