真野遥の「やさしい発酵図鑑」

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【やさしい発酵図鑑vol.9】粕汁だけじゃない! 栄養豊富な「酒粕」を上手に活用する方法

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真野遥
発酵料理家
ものづくりに興味を持ち、「一番身近なものづくりは料理である」と食の道へ。全国の酒蔵、味噌蔵など醸造所を訪ねて周り、訪問した酒蔵は60件以上。現在は、日本酒に合う発酵料理の提案を中心に、レシピ開発や執筆を中心に幅広く活動している。日本酒と発酵食品のペアリングが楽しめる料理教室も主宰し、参加者数は年間500名以上にのぼる。

こんにちは、発酵料理家の真野遥です。今回のやさしい発酵図鑑のテーマは「酒粕」です!

 

「酒粕」は日本酒の搾り粕ですが、“カス”と言うにはもったいないほど栄養豊富で、上手に使えば料理をグンとおいしくしてくれます。しかも、食べるだけではない、意外な使い方もあるんです!

 

酒粕が冷蔵庫に眠っている方必見! 酒粕活用アイデアをたっぷりご紹介します♪

 

実は色々種類がある! 酒粕ってどんなもの?

 

「酒粕」とは、日本酒の醪(もろみ)を圧搾し、清酒(液体)と分離した後に残る、固形状の搾りかす。スバリ、日本酒の副産物です。

 

酒粕には8〜10%程度のアルコール分が含まれ、たんぱく質や食物繊維、ビタミン類、ペプチドやアミノ酸、麹菌や酵母の菌体が多く含まれています。また、 酒粕にはいくつか種類があり、“どんな日本酒の粕か”によって酒粕の味わいも変わってきます。

 

今回は、代表的な酒粕の特徴とそれぞれの使い方をご紹介します。

 

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・板粕(写真上)

最も一般的な圧搾機(ヤブタ式と呼ばれる)で搾られた酒粕は、板状になっています。「板粕」は、それを剥がす際に、そのまま板状に取ったもの。甘酒や粕汁など料理全般に使える上、形状を活かしてそのまま焼いてもおいしくいただけます。

 

・バラ粕/粉粕(写真左)

板粕を取る際に生じた断片で、板粕と同様に、料理全般に使えます。

 

・熟成粕/練り粕/踏み込み粕(写真右)

板粕かバラ粕を踏み込んで空気を抜いた後に貯蔵したもので、熟成させることによって軟化し、やや茶色くなります。ペースト状になっているため料理に使いやすいですが、熟成由来の独特な風味があるため、甘酒や粕汁よりも、肉や魚の漬け床に適しています。

 

板粕やバラ粕は一般的にスーパーで販売されていますが、熟成粕はあまり市場に出回っておらず、酒蔵や酒販店で販売されていることが多いです。

 

なお、吟醸酒の粕は「吟醸粕」、大吟醸酒の粕は「大吟醸粕」と呼ばれ、ともに香りが華やか。酒粕になる部分が多い(あまり醪を搾らない)ため水分を多く含み、柔らかいのが特徴です。

 

*吟醸酒/大吟醸酒については「やさしい発酵図鑑vol.7をご参照ください。

 

 

酒粕はどんなふうに使われている? 知恵が詰まった全国の酒粕活用法!

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酒粕は日本酒の副産物なので、日本酒を造れば造るだけ出てくるもの。そのため、なるべく酒粕を余らせぬよう、昔から様々な工夫がなされてきました。その一部をご紹介いたします。

 

・粕汁

今でこそ全国で親しまれている「粕汁」ですが、元々は関西特有の文化であることをご存知でしょうか? 兵庫県の灘地区や京都府の伏見地区などの銘醸地では、日本酒が造られると同時に酒粕が大量に出るため、新酒(と酒粕)が出る冬場に粕汁を食べる文化があり、今でも根付いています。

 

・しもつかれ

栃木県を中心とした北関東の郷土料理「しもつかれ」は、大根と人参を「鬼おろし」という目の粗いおろし器ですりおろし、大豆、鮭の頭、酒粕と共に煮込む料理。二月の初午の日に食べられています。

 

・奈良漬け

奈良県発祥の「奈良漬け」は、胡瓜や白瓜、西瓜などの瓜類の野菜を塩漬けにしたのち、酒粕に長期間漬けた漬物。熟成粕に何度も漬け換えることによって、独特の深みが生まれます。

 

・粕取り焼酎

酒粕に残ったアルコール分を蒸留して造られる「粕取り焼酎」。米作りが盛んな北九州を中心に造られています。元々は、酒粕を稲作の肥料にするためにアルコール分を抜き取ったのが始まりだったそうです。なお、酒粕に籾殻(もみがら)を混ぜて蒸留する方法もあります。

 

・粕酢

酒粕を原料に造られる「粕酢」は、江戸時代に酒造りが盛んだった愛知県半田市の醸造元で誕生しました。酒粕は日本酒の副産物として日々大量に出ていたため都合がよく、安価で良質な酢として普及しました。

 

※「お酢」については「やさしい発酵図鑑vol.3」をご参照ください。

 

なお、一部の酒粕は産業廃棄物として廃棄されてしまう場合がありますが、できるだけ廃棄せず有益に活用できるよう、家畜や養殖魚の飼料に使うなど、様々な方法での活用が模索されています。

 

酒粕ペーストで自由自在!もっと酒粕を使いこなそう!

「酒粕ペースト」

栄養豊富で、料理にコクを与えてくれる酒粕。塊状の酒粕は、料理に使う際にほぐして使いますが、もっと便利に使える「酒粕ペースト」の作り方をご紹介します。 酒粕を予めペースト状にすることで、グッと料理に使いやすくなりますよ。

所要時間
10分
材料

(作りやすい分量)

酒粕(板粕かバラ粕)…200g

酒…60ml

水…60ml

作り方

1

耐熱ボウルに酒粕をちぎって入れ、酒と水を加える。ふんわりとラップをかけて600Wの電子レンジで2分加熱する。

2

ブレンダーにかけて滑らかになるまで攪拌する。

※ブレンダーがない場合は、ミキサーやハンドミキサー、フードプロセッサーでも攪拌できます。

3

保存容器に移し、完全に冷めたら冷蔵庫で保管する。冷蔵庫で3ヶ月ほど保存可能。

 

酒粕ペーストを作っておけば、さっと料理に使うことができて、とっても便利! ブレンダーにかけることでボソボソ感が無くなり、酒粕のクセも和らぎますよ。

 

美容にも嬉しい! 酒粕の良さを活かした上手な活用方法

酒粕は固形分があり風味も強いため、料理への使い方に悩まれる方が多く、「粕汁しか使い道がわからない…」という声をよく耳にします。しかし、酒粕と相性の良い食材や料理へ応用するポイントを押さえれば、もっと自由自在に酒粕を使いこなせるようになりますよ!

 

ポイントとしては、酒粕は風味が強いため、繊細な食材よりも、香りが強い食材や味が濃厚な食材と相性抜群。また、酒粕は固形分があるため、とろっとしたテクスチャの料理とよく合います。私のイチオシの使い方をピックアップしました。

 

■料理をもっとおいしくする活用法

 

・カレーなどのスパイス料理

スパイスの風味と合わさると、酒粕の独特のクセが和らぎ、とても食べやすくなります。カレーの隠し味に酒粕を入れると、コクのあるまろやかな味わいに!

 

・ドレッシングやマリネ

酒粕ペースト、酢、はちみつ、オリーブオイル、塩を混ぜると、とろっと濃厚なドレッシングになります。大根やカブなどを軽く漬け込んでマリネにしてもおいしいですよ。

 

・牛乳や豆乳を使う料理

グラタンやクラムチャウダー、ミルクスープなど、牛乳や豆乳を使う料理全般に酒粕がよく合います。とろみがつくので、小麦粉代わりに使えばグルテンフリーになるのも嬉しいですね。

 

・白和えなどの和え物

和え物に酒粕ペーストを追加するのもおすすめです。特に、白和えに酒粕を入れると、濃厚でコクのある白和えになっておいしいですよ!

 

・肉、魚、野菜の漬け込み

肉や魚を漬けてから焼くと、しっとり柔らかく仕上がります。酒粕はみそと相性が良いので、酒粕とみそを半々で混ぜて漬け床にするのがおすすめです。アボカドの粕漬けなど、野菜を漬けても絶品ですよ! 漬け込みには、特に熟成粕がおすすめ。

 

・焼き菓子やスイーツ

クッキーやパウンドケーキ、チーズケーキなどの焼き菓子や、ミルクプリンやジェラートなどのスイーツに酒粕を入れるのもおすすめです。酒粕は、焼くとチーズのような風味になります。

 

 

■豆知識! パックや入浴剤にも使える?

 

さらに、栄養豊富な酒粕は食べる以外にも活用方法があります!

 

・酒粕パック
酒粕ペーストをパックとして使う方法。使い方は、洗顔後の肌に塗って5分ほど置き、ぬるま湯で洗い流すだけ。乾燥肌の方は、グリセリンやワセリンを加えると、よりしっとり仕上がります。

 

・入浴剤

酒粕をお風呂に入れると、体が芯から温まり肌もスベスベに。ただし、そのままお風呂に入れると排水溝が詰まってしまうため、酒粕(ペーストじゃなくてもOK)を生ゴミ用ネットに入れ、湯船の中で揉みほぐすようにしましょう。

 

*添加物の入っていない「純米酒粕」を選ぶのがおすすめです。アルコールが含まれるため肌に赤みが出る可能性があり、肌の弱い方はご注意ください。異常が出た場合はただちにご使用をお控えください。

酒粕ペースで作る!「春野菜のクリーミースープ」

「春キャベツと新玉ねぎの酒粕ミルクスープ」

酒粕ペーストを作っておけば、ドレッシングやカレーなど、様々な料理に活用できます。毎日の献立に取り入れるのであれば、スープなどの汁物がおすすめです!

普段のおみそ汁に入れるのでも良いですし、洋風のスープに加えるのもおいしいですよ。牛乳や豆乳を使ったスープには、とりわけ相性抜群です。

所要時間
15分
材料(2人分)

OLYMPUS DIGITAL CAMERA春キャベツ…1/6個

新玉ねぎ…1/2個

*普通のキャベツと玉ねぎでもOKです。

ベーコン…3枚

しめじ…100g
酒粕ペースト…70g

みそ…大さじ1と1/2

オリーブオイル…大さじ1/2

水…300ml

豆乳(無調整)…200ml

塩…適量

黒胡椒…適量

パセリ(みじん切り)…適宜

作り方

1

春キャベツはザク切りに、新玉ねぎは薄切りにする。ベーコンは短冊切りにする。しめじは石づきを切り落としてほぐしておく。

2

鍋にオリーブオイルを入れて中火で熱し、ベーコンを炒める。新玉ねぎとしめじを加えてさっと炒め、キャベツを加えて全体に油が回るまで炒める。水を加え、沸騰したら蓋をして、弱火で3分蒸し煮にする。酒粕ペーストを溶かし入れたら、さっと煮立てる。

3

豆乳を加え、みそを溶かし入れ、沸騰しない程度に温めたら火を止める。塩コショウで味を調えたら器に盛り、お好みでパセリを散らして完成。

 

***

具沢山のスープですが、春キャベツと新玉ねぎの甘みとさっぱりとした食べ心地で、ぺろりと食べ切れちゃいますよ!  酒粕のデンプン質やタンパク質も含まれているので栄養バランスが良く、朝ごはん代わりに食べても◎。

 

「カス」と呼ぶにはもったいないくらい栄養豊富で美容と健康に嬉しい酒粕。毎日のお料理に手軽に取り入れてみてくださいね!