小倉ヒラクの「発酵トラベルノート ~旅と醸しのおたのしみ~」

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【第38回】夏を贅沢に割りまくれ! オトナソーダ割の誘惑

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小倉ヒラク
発酵デザイナー
「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、東京農業大学の醸造学科研究生として発酵を学びつつ、全国各地の醸造家たちと商品開発や絵本・アニメの制作やワークショップをおこなっている。『てまえみそのうた』でグッドデザイン賞2014受賞。自由大学や桜美林大学等の一般向け講座で、発酵学の講師も務めている。2015年より新作絵本『おうちでかんたんこうじづくり』とともに、「こうじづくり講座」を全国で展開中。著書『発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ』(木楽舎)が絶賛発売中!

味噌汁飲んでますか?
発酵デザイナーの小倉ヒラクです。

 

今年の夏はほんとに暑いですねえ。1日仕事で外に出ていると、夕方には汗びっしょり、身体中の水分が抜けきってミイラ状態になります。

 

そんな酷暑の夏は、シュワッと爽快な炭酸のお酒をゴクゴク飲みたいものです。

 

そこまでは異論ないよね?

 

で。僕たちってば、わりといいオトナじゃないですか。だからコンビニで売っているチューハイ缶やハイボール缶をサクッと飲むのもいいけど、お家でちょっとラクジュアリーかつファンキーなソーダ割に挑戦してみるのもいいと思うんだ。

 

つまり。「これ割って飲むなんてちょっともったいなくない?」的な飲み方や「この季節ならではの旬を堪能しまくるぞ!」的な飲み方に挑戦してみようではないか。

 

 

深みのある高級スピリッツを割る

 

僕の夏のお気に入りは、深みのある高級スピリッツをソーダ割にして飲むこと。例えば、シングルモルトのスコッチウィスキー。普段ならストレートでじっくり味わうような香り高いお酒ですが、これをハイボールにする。

 

お酒に入門したての20代の頃の僕なら、

 

「えええっ、そんなもったいない…! 普通のグレードのブレンデッドウイスキーでいいんじゃないの?」

 

となるところですが、ほら、いいオトナだからさ。遠慮なく割るんだよ。高級酒をさ。風呂上がりにバスローブでテラスに座って沈む太陽を見ながらさ、

 

「見つけたよ。」

「何を?」

「永遠さ…!」

 

とランボーの詩の一節を詠みつつグビッと贅沢なハイボールを飲むのさ。

 

ちなみにこの時のポイントですが、

 

・炭酸は強炭酸にして、ウィスキーをやや濃いめに割る

 

・氷はなるべく大きめのものを選ぶ

 

・スピリッツぽい味が立ち上ってくるのが苦手な人はレモンかライムを絞る

 

・ステア(かき混ぜ)は最小限にする

 

あたりに気をつけると、缶で売っているハイボールと有意に味が違ってきます。コンセプトは、ハイボールの爽快さをキープしつつ、スコッチの持つ香り高さを最大限に活かす。喉の渇きを潤しつつ、しかし芳醇な香りがはじけていく至福よ…!

 

では次。

 

泡盛の古酒(数年寝かせた熟成泡盛)をハイボールにしてみよう。これも上記のスコッチのハイボールと同じようなコンセプトで割る。

 

(個人的にはロンググラスではなく、ロックグラスでクラッシュしない丸ごとの氷で割るのが好み)

 

泡盛の醸造現場に行ってみるとわかるんだけど、蒸留したての泡盛ってアルコール度数が50%くらいある。なんだけど飲みやすさや税制の問題で25〜30%くらいに割って出荷するのが普通。

 

しかし! ローカルの泡盛好きが好んでいるのはもっと度数高めで、しかも熟成されて味に深みが出た古酒だったりするんだ。これ、ストレートで飲んでみると本当においしい。泡盛の米っぽいフレーバーが変質して、南国のフルーツのような香りが長い余韻になって悶絶しそうなほどエクセレントなんだ。

 

でもね、度数40〜50%くらいあるくせに妙に飲みやすい泡盛の古酒。スイスイ飲んでいると翌日のカレンダーが空白になることは必至…! かといってシークワーサー割では甘みが邪魔で、水割りやロック割も悪くないがもうちょっと香りを立たせる仕掛けが欲しい…

 

ということで強炭酸のハイボールなのだな。スコッチと同様、香りを殺さない。でも爽快でグビッといける。しかも食中酒としても優秀で、チャンプルーとかラフテーとか食べながらおいしく飲める。銘柄を変えて香りをテイスティングしてみるのも非ッ常に楽しいよ。

 

 

クラフトジンをレモンサワーにする

 

僕がここ1年ほど激しくハマっているのがクラフトジン。イギリスを始めとして、オランダやアメリカ、イタリアや日本などで続々登場する高品質なハーブを使った個性派ジン。普段バーで出てくるジンに慣れている人には同じカテゴリーの酒とは思えない、衝撃的な味のクラフトジン。

 

これもスコッチや泡盛の古酒と同じく、まずはストレートで飲むのがいい。

 

できれば飲む前に冷凍庫に突っ込んでおいて、ちょっとトロッとした状態のものを飲むのが最高(アルコール度数の高い液体は冷凍庫でも凍らない)。

 

でもね。喉の乾きを潤したりカジュアルに食事に合わせるにはジンのストレートはパンチがありすぎる。

 

そこで炭酸で割るのさ。通常、ジンの炭酸割はソーダではなくトニック。つまりジントニックにするのですが、クラフトジンは酒それ自体に豊かな風味とハーブの香りが濃縮されているので、トニックの甘さや香りがトゥーマッチに感じることもある。

 

ジントニックを飲めば、バーの哲学がわかる?奥深きシンプルカクテルの真髄

 

ではどうするかというと、ソーダ割に生レモンを絞るドライなレモンサワースタイルでいくのさ。このクラフトジンレモンサワー、発酵デザイナーがこの夏オススメする至高の炭酸飲料と言っても良い。

 

爽快・芳醇・香り高い。三拍子揃った最強の夏酒やで〜!!!

 

具体的な銘柄は言えないのだが、レモンフレーバーを濃厚に抽出したイタリア産クラフトジンをレモンサワーにした時がいつかぁ~二人をまたぁ~始めて会った~あの日のように導くのならぁ〜二人して生きることのぉ意味をあきらめずに〜語り合うことぉ〜努めることをぉ〜誓うつも〜りさぁ♪

 

『何も言えなくて…夏。』by JAYWALK

 

 

レモン自体をアイスにする

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本来はストレートで味わうべき高級酒を遠慮なく割りまくるオトナソーダ割の世界は奥深い。さらなるラクジュアリーを追求するならば、

 

・大量のレモンを冷凍し、ロックアイスの代用とする

 

という答えに行き着くのが必然。レモンを1/8の櫛切にして冷凍庫に突っ込み、大きめのグラスに隙間なく押し込む。そこにお好みのスピリッツと炭酸を注ぎ、レモンを軽く押しつぶすようにスプーンでステアする。

 

コツはすぐに飲まずにレモンのエッセンスが酒に染み込むまで30秒〜1分くらい待ってから飲むのが乙。アイスが入っていないぶん味が濃厚なまま冷たくなり、レモンからは酸味以外の、果肉のまろやかさのようなものが抽出され、より上等なオトナソーダ割になる。

 

最後に、僕が住む山梨ならではのオトナソーダ割を試してみた。

 

夏の時期に消費しきれないほど出回る大量の桃。これを冷凍してアイスの変わりにして、ビアカクテルに(甘味のバランスを取るために辛口のアサヒスーパードライをチョイス)。

 

グラスの底に凍った桃を敷き詰め、そこにビールを注ぎ、スプーンで底の桃を潰してシャーベットのような状態にしてグビッと飲む。

とれたての桃はちょっと固くて酸味があるので、ビールとピッタリ合う。適度にドライで爽やかな香りのシャーベットカクテルのようになってかなり悪くない感じだぜ…!

 

さらに。

 

冷凍レモンと冷凍桃をミックスしてクラフトジンサワーをつくってみた。思いつきで試してみたのだが、冗談のようにおいしい。

 

酸っぱさと味のコクと炭酸の爽やかさにほんのりとした甘味が加わって、なんというか、田舎の別荘地で競馬に興じるヨーロッパ貴族みたいなカントリー&セレブ感満載のハイクオリティ飲料になった…!

 

以上のように、夏はオトナソーダ割のレシピ開発をするのにピッタリの時期。行きつけのバーでマスターと一緒に実験してみるのも良し、宅飲みで友だちと飲み比べてみるのも良し。

 

自分にピッタリの尊い飲み方を見つけられたし。

 

それではごきげんよう。

 

【追記1】オトナソーダ割を本格的に楽しみたいなら、炭酸水メーカーをゲットするのがおすすめ。リーズナブルだし、ペットボトルゴミも出ないし、何より炭酸の強さを自分好みに調節できる。僕の家はしいおい地下水が湧いているので自家製炭酸水が超絶に美味。

 

【追記2】実は日本酒をソーダ割にするという奥義がある。割水していない生原酒や無濾過などアルコール度数と味の濃縮度が高いものを、炭酸と1:1で割ってレモンやすだちなどを絞って飲む。普通に飲んだ時にはわからない微妙な酸味や甘味があらわれてきて、なかなか悪くない感じだよ。