小倉ヒラクの「発酵トラベルノート ~旅と醸しのおたのしみ~」

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【第4回】飲み会を最高に楽しむためには、「銭湯」で心と身体を整える!

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小倉ヒラク
発酵デザイナー
「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、東京農業大学の醸造学科研究生として発酵を学びつつ、全国各地の醸造家たちと商品開発や絵本・アニメの制作やワークショップをおこなっている。『てまえみそのうた』でグッドデザイン賞2014受賞。自由大学や桜美林大学等の一般向け講座で、発酵学の講師も務めている。2015年より新作絵本『おうちでかんたんこうじづくり』とともに、「こうじづくり講座」を全国で展開中。著書『発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ』(木楽舎)が絶賛発売中!

 

味噌汁飲んでますか?発酵デザイナーの小倉ヒラクです。

 

去年、僕は生まれ育った東京を離れて山梨の山の上に引っ越しました。で、田舎の人になってみたらば、夜に都会で人と飲む機会がレアになるわけです。

 

すると、今までなんとなく参加していた飲み会を100%楽しみ切りたい!というモチベーションになるので、発酵デザイナー独自の「最高の飲み会メソッド」ができてくるわけですよ。

今回は読者の皆さまにそのスペシャルメソッドをお教えするぜ。

 

 

開始時刻の1時間半前に、最寄りの銭湯に入るべし!

 

飲み会の場所と時刻が設定されたら、まず1時間半前には仕事を終わらせ、最寄りの銭湯をリサーチしてひとっ風呂浴びます。

 

虚弱体質の自分にとって「お酒を飲む」という行為はかなりの負担がかかります。そこで、まずは摂取したアルコール及び食物成分を消化吸収するための準備が必要なわけで。お風呂にじっくり入っておくと、体温が上がり、代謝活動も活発になるし、昼間の仕事にまつわる雑念を一旦リセットすることができます。

 

そして、湯船に浸かりながらイメージトレーニングをする。愉快に酒を飲み、朗らかに友と語り合い、かつ自分の胃腸を破壊しないような、完璧にムダのない注文プロセス及び飲食のペース配分を綿密に設計する。

 

そして小一時間も経って洗面台で髪を乾かす頃には、適度に喉も乾いて準備オーケーなわけさ。

 

整ってる、整ってるよ自分!

 

 

時間通りの登場は、死を意味すると思え!

さて、開始一時間半前にお風呂に入り始め、小一時間で銭湯を出たということは、あと30分時間が残されているわけです。

 

それはなぜだかわかりますか?

開始時刻よりも微妙に早く会場入りするためです。

 

考えてもみてください。

時間通りの到着にメリットなど何一つありません。

 

まず、みんなと一緒にオーダーをしなければならないでしょ。そしたら、ゆっくり吟味することなど不可能なわけだから「とりあえずビール」とか「フライドポテト」とか口走ってしまうわけでしょ?それって地獄の一丁目でしょ?

 

で、ビール来たら「今日の主役は誰だ?」とか参加者の顔色伺いながら乾杯するわけでしょ。

 

場の力関係が気になって味を楽しめないでしょ? それって地獄の二丁目でしょ!?

 

で、料理が運ばれてきたら、自由・平等・博愛の三原則に基づいて分配するというタスクが待っているでしょ。「これは本当にフェアな分配なのか?」と自問自答しながら食べたら、当然料理の味なんてわからないでしょ? それってもはや地獄の三丁目であり、引き返すことの叶わぬ惰性飲み地獄(←仏教十六小地獄の一つ。他にはこじらせ地獄、オシャレ地獄、意識高すぎ地獄などがある)に堕ちちゃっているわけだが、それで本当にいいんですかぁッ!?

 

さて。
この地獄に堕ちないためにも「微妙に早く会場入りする」という戦略が有効なわけだ。ゆっくりとメニューを吟味し、最初の一杯にふさわしい酒と、分配しにくそうなおつまみをオーダーし、じっくりと味わう。

 

一人が基本だけど、隣席にもう一人くらい座っていてもいい(ちなみに向かい合って座るのはNG。横並びで飲むのが最高にリラックスできるのさ)。

 

「…で、最近どうよ?」なんて、大人数だと話しにくいトピックスを気楽に話しているうちに開始時刻になり、他の参加者がやってくるわけよ。そしたらさ、「やあ、こっちはもう軽く一杯始めちゃってるんだけどさ」なんてガンダーラの仏像もビックリなアルカイックスマイルを浮かべつつ飲み会をスタートできるわけよ。

 

わかりますか?この余裕。

飲み会を100%楽しみ切るためには、誰に惑わされることのない確固たる存在と時間を実存させることが必要なわけですよ。byハイデッガー

 

もし事前到着が難しい場合は、あえて20分程度遅れていくという選択肢もある。みんなが乾杯の一杯を飲み終え、最初にオーダーした料理をひとくち食べた頃に「ごめんごめん、打ち合わせが押しちゃってさ」なんて言いながら席につく。したらば、机に残っている料理を見ながら「何が美味しかった?」なんてリサーチができる。つまりじゃんけんにおける後出し戦略が可能になる。

 

さてここで、賢明なる読者の皆さまはお気づきだと思う。

コース料理&飲み放題は無粋の極みである、ということに。

 

フェア&楽ちんであることに拘泥するあまり、メニューを熟読し、酒の進み具合・自分の体調とともに柔軟にオーダーをアレンジしていくという「外食飲みの真髄」を放棄することは仏法に背く重罪、ただちに惰性飲み地獄に堕する背徳であると言いたい。

 

飲み会とは、参加者それぞれの思惑を満たしつつ、全体としてのハーモニーも実現する幸福なインプロビゼーション(即興演奏)でなければならない。

 

そして高度なインプロビゼーションをなし得るためには、事前の準備とイメージトレーニングが大事なのであるよ。

 

ということで、僕を飲み会に呼んだらばヘンなタイミングに半乾きの髪で登場すると思っておいてください。

 

それではごきげんよう。