小倉ヒラクの「発酵トラベルノート ~旅と醸しのおたのしみ~」

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【第5回】地中海沿いのカフェで食べるパン・ド・カンパーニュとオリーブ。人生No.1の朝食は、トルコの朝ごはん!

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小倉ヒラク
発酵デザイナー
「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、東京農業大学の醸造学科研究生として発酵を学びつつ、全国各地の醸造家たちと商品開発や絵本・アニメの制作やワークショップをおこなっている。『てまえみそのうた』でグッドデザイン賞2014受賞。自由大学や桜美林大学等の一般向け講座で、発酵学の講師も務めている。2015年より新作絵本『おうちでかんたんこうじづくり』とともに、「こうじづくり講座」を全国で展開中。著書『発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ』(木楽舎)が絶賛発売中!

味噌汁飲んでますか?

発酵デザイナーの小倉ヒラクです。

今日は「人生最高の朝ごはん」の話をしようかなと。

 

僕、高校生の終わり頃からバックパック担いでよく海外1人旅に出かけておりました。

(←高校で友だちが全然できなくて現実逃避しに行った)

 

アジア・ヨーロッパ・アフリカとあちこち行ったなかで、今でも思い出す最高の朝ごはん。それはトルコの地中海沿いの小さな町のカフェで食べた「トルコ式モーニングセット」なのです。

 

 

イタリアには楽勝だが、パレスチナには負けるオリーブ

トルコ料理って、どんなものかご存知ですか?

 

おそらくみんなが知っているトルコ料理というと、ケバブや甘いミントティー(チャイ)あたりかしら?日本ではそんなにメジャーではないですが、実は世界三大料理のひとつであるトルコ料理。

 

「フォークで食べる文化圏」からはフランス料理、「箸で食べる文化圏」からは中華料理、そして「指で食べる文化圏」からはトルコ料理がレペゼンしているんですね。(あ、レペゼン=代表ってことね)

 

さてそのトルコ料理。スパイスの効いた中東フレーバーをベースに、ヨーロッパ食とアジア食のおいしいところを取り込んだ、地獄のようにおいしい食文化なのです。(と書いているだけで食べたくなってきた…)なかでも、僕が最高に好きすぎて悶絶していたのが「定番のモーニングセット」だったのさ。

 

冒頭のイラストにある通り、基本のセット内容は以下↓

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パン・ド・カンパーニュ ☆必須☆

オリーブの塩漬け ☆必須☆

きゅうりとトマト ☆必須☆

白チーズセット☆ほぼ必須☆

チョルバ(豆のスープ)☆あったら嬉しい☆

メネメン(トルコオムレツ)☆みんな大好き☆

 

あとチャイね。
では1個ずつ解説していくぜ。

 

まずパン!このパンはバゲット型ではなくフランスの田舎パン型の丸い亀の甲羅みたいなのが定番。トルコでは街の角を曲がるまでに必ず1つはパン屋があると言われ、毎朝カフェに新聞みたいなノリで焼きたてパンが配達されていました。(今から10年以上前の話。今はどうだろう)

 

でね、このパンがおいしいんだ。外はかなりハードに焼かれているのですが、中はモチモチふんわりとしていて、しかも食べ応えもちゃんとある。僕、フランスにも住んでいたことがあるんですけど、パン単体で言うとトルコの田舎パンが一番好きです。

 

次にハマったのが、オリーブの塩漬け。パンをモグモグと頬張りつつ、クタッとしているオリーブの実を口に放り込んでいくわけですが、これが最強に強まったコンビネーションすぎて、朝焼けの地中海に向かって「青春!」と吠えてヤリイカみたいな勢いで五体投地せんばかりにおいしいんだよ。

 

僕の滞在していた地中海の街では、なぜか自分たちのオリーブに絶対の自信を持っていて「イタリアには余裕で勝てる。負けるとしたらパレスチナだ」と力説しておりました。

 

そしてお盆には、きゅうりとトマトをざっくり切っただけのものがざっくりと乗っているわけだが、塩もドレッシングもつけずにムシャムシャと食べると、濃厚な味わいすぎて困るレベルでウマい。

 

そして、その横には日本ではあんまりお目にかかれない白チーズ(羊の乳から作られるチーズ)がだいたい3種類ぐらいスライスされていて、僕はきゅうりをチーズに巻いて食べるのがフェイバリットだった。

 

当時10代だった僕は発酵に全然興味なかったので、田舎パンと白チーズを再食するためだけにトルコにフライトしてもいいぐらいトルコの発酵文化はリッチかつエキゾチックかつ素朴で素晴らしい。

 

 

旅のポエジーを感じる豆のスープとオムレツ

ここまでがどんなモーニングセットにも標準でついているメニュー。
+αでオーダーするのが、スープとオムレツ

 

僕がよく通っていたカフェではメルジメク・チョルバス(豆のスープ)が定番で、レンズ豆が入ったトロっとしたシンプルな味がとてもとても美味しかった。このスープがきっかけで僕はスープ好きになり、日本に帰ってスープ修行に精を出し、ついに味噌スープのエクスパートになったのであるよ(今度「世界のスープ」話も書きます。みんな読みたければだけど)。

 

そしてオムレツね。 石井好子さんの名著『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』じゃないですけど、オムレツって旅のポエジーを掻き立てる料理なんですなぁ。

 

「なぜポエジーを感じるのか?twitterのつぶやき1回分で説明せよ」

卵に熱を加えるという、超単純かつユニバーサルな原理であると同時に、仕上がりはローカルな食文化の美意識が強く反映されるという「ルールは一緒で、表現が多様」な点が最高にイケてる。異国の見知らぬテイストを味わいつつ、祖国の味も思い出せるという相反するこのセンチメンタリズムよ……(137文字)

 

僕がよく食べていたのは、トマトと唐辛子、玉ねぎなんかをオリーブオイルとハーブ類でサッとスクランブルエッグにする「メネメン」というオムレツ。オムレツというと日本では“オマケ”的な扱いですが、この「メネメン」はかなりの存在感。ちっちゃい鍋みたいのに入って出てくるのですが、こいつをハフハフ食べつつ、パンを食べつつ…というのは至福のおいしさでした。

 

単純なレシピなので日本でも再現できるかと思ったら上手くいかなかった。(多分素材自体の味が違う。なんか「醤油っぽい感じ」になっちゃうんですよね)

 

トルコ料理には色んな種類のオムレツがあるらしく、ぜひコンプリートしてみたいものです。ていうか、世界には洋の東西問わず様々なオムレツがありまして、いつか「オムレツ世界一周」という趣味すぎるツアーに出たいと思っています。

 

 

朝ごはんを食べるためだけにトルコに行ってもいい!

トルコの地中海沿いには、ローマ時代の神殿に使われていた円柱とかがゴロゴロそのへんに転がっているような情緒ある街並みが残っています。

 

丘の上のホテルから下町を下って行くと、登校途中のちびっ子たちがローマ時代の瓦礫でかくれんぼして遊んでいる横で、日本だったら間違いなく血統書付きのフワフワの白猫(たぶん野良)がのんびりあくび。で、クネクネと坂道を下っていくと、視界が開けて一面キラキラ光る地中海。

 

そんなタイムスリップしたような景色のなか、真っ青に輝く海を眺めながらの朝ごはん。五感すべてで味わう贅沢な時間でした。

 

あぁ、朝ごはん食べるためだけにトルコに行っても惜しくない!

 

余談ですけど、このトルコの朝ごはんフルコース。全部食べたらお昼はぜったい食べられない!という量なんですけど、お昼になってきたらまたいい匂いにつられてスタンドでピザとかピラフとか食べちゃうんだよね〜。

 

それではごきげんよう。