綿矢りささん×加藤千恵さん|【第2回】仲良し女性作家コンビが 語る!「女同士」がテーマの最新刊

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    加藤千恵
    1983年北海道生まれ。歌人・小説家。2001年短歌集『ハッピーアイスクリーム(集英社文庫)』で高校生歌人としてデビュー。歌集としては異例のベストセラーを記録する。歌人・小説家としてだけでなく、雑誌のコラム連載、ラジオパーソナリティなど幅広く活動中。主な著書に『ハニー ビター ハニー(集英社文庫)』『あかねさす 新古今恋物語(河出書房新社)』『その桃は、桃の味しかしない(幻冬舎)』 『あとは泣くだけ(集英社)』など多数。近刊は『私に似ていない彼女(ポプラ社)』。
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    綿矢りさ
    1984年京都府生まれ。小説家。2001年高校在学中に『インストール(河出書房新社)』で第38回文藝賞受賞。2004年早稲田大学在学中に『蹴りたい背中(河出書房新社)』で第130回芥川賞を史上最年少・19歳で受賞する。2012年『かわいそうだね?(文藝春秋)』で第6回大江健三郎賞を受賞。『勝手にふるえてろ(文藝春秋)』『意識のリボン(集英社)』など著書多数。近刊は『生(き)のみ生のままで(集英社)』(上下)。

アマノ食堂に訪れる、お客さんの“おいしい話”をお届けする「今週のお客さん」。

ゲストは前編に続き、小説家のお2人、綿矢りささんと加藤千恵さんです。

『女同士のコミュニケーション』をテーマに、女作家同士の交流や女同士の関わり方についてたっぷりお話しいただきました。後編は、「女2人」をテーマに登場人物の心情をリアルかつ繊細に書かれた最新刊についてお聞きします。

この作品に登場する女性たちへの思い、作品を書いて生まれた気づきなど。最新刊に込められたお2人の想いに迫ります!

 

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——最新刊でお2人とも「女同士」をテーマにされているということで、今回の小説についてお聞きしたいです! まずは、「女同士」をテーマにされた経緯から教えてください。

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友情を飛び越えた関係を表現したかった

(綿矢りささん)

taidan_1912_01_wataya私は、ずっと女同士の友情物語みたいなものを書いてきたんですけど、もう少し飛び越えて女同士の「恋愛」で書いてみたいなと思って。

taidan_1912_01_kato私、りさちゃんの今までの作品の中で一番好きかも。

taidan_1912_01_wataya嬉しい! 5年くらい前から「書きたいな」と思っていたけれど、どんな風に表現すればいいか具体的なイメージが思い浮かばなくて……。

taidan_1912_01_katoそうだったんだ!

taidan_1912_01_watayaでも、世の中の流れもあって、恋人同士になったらどんな風に、本人たちや世間が動くのかな? というのがちょっと想像しやすくなったから、そろそろ書こうと思って書きました。

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綿矢りささん新刊『生のみ生のままで(集英社)』
…携帯電話ショップに勤務する逢衣(あい)と芸能活動をする彩夏(さいか)は25歳の夏にお互いの旅行先で偶然出会う。次第に恋に落ちていく女性同士の恋愛小説。

taidan_1912_01_kato緊張感もありながら、緩むところがとても面白かった。緊迫したベッドシーンとかでちょっと突っ込みが入るみたいなところとかね。

taidan_1912_01_watayaベッドシーンはけっこう頑張って書いたからそう言ってもらえるとすごく嬉しいな。

taidan_1912_01_kato芸能界が舞台の『夢を与える(河出書房新社)』もすごく好きなんだけど、今回も同じように芸能界が絡んでいて、今までの作品の集大成という感じがした。上下巻だけど、駆け抜けるように読めて本当に面白かった!

taidan_1912_01_watayaありがとう! 嬉しい。 千恵ちゃんはどうして「女同士」をテーマに書いたの?

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女性同士の「非共有」を描きたかった

(加藤千恵さん)

taidan_1912_01_katoもともと別のアンソロジー(短編小説)で、「商店街」という縛りがあって書いたのが最初かな。

taidan_1912_01_watayaそれがきっかけだったんだ。

taidan_1912_01_katoその中で、今回の小説にも載せている「お茶の時間」があって。

taidan_1912_01_wataya会社を辞めて台湾茶の専門店を営む主人公の元に、職場の元後輩「原ちゃん」が訪ねてくる話! 「原ちゃん」は、職場の元後輩という、近いようで近くない関係なんだけど、主人公に見えてる一面とは違う面を実は持っていて…。最後は衝撃的な結末が待ってるんだよね。

taidan_1912_01_katoそうそう。その時の担当編集者さんに「女性2人というのを軸にするのはどうですかね」と言われて、「それは面白そう」と思って挑戦した感じ。

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加藤千恵さん新刊『私に似てない彼女(ポプラ社)』
…決別した母と娘や、見えない鎖に縛られた姉妹、永遠に続くと思っていた友人同士など、近いようで近くない「女2人」の関係を綴った短編小説。

taidan_1912_01_watayaそうなんだ。私が一番心に残ったのが「非共有」。小説家の「綾」と大学時代から友人で翻訳家の「淳子」、2人の話!

taidan_1912_01_kato遠目から見たら気の合っている2人なんだよね。

taidan_1912_01_wataya短い会話の間に、主人公が心のなかでの女友達との距離が、開いたり縮まったり、目まぐるしく変化するんだよね。自分と共通項の多い、分かり合えてると信じてた友達の、自分との考え方の違いに気づいて、愕然とする。でもその違いを真剣に考えた結果、主人公はすごく老成した受容に行き着くんだよね。

taidan_1912_01_katoそうそう。

taidan_1912_01_wataya「全然分かり合えていないんだ」と思うことがあっても、相手は嫌味で言っているわけではなくて、本当にただ自分とは違う面なんだなと気づいて。最後に食べ物を食べて「おいしい」と思う、「それだけは自分の感覚や」って思ったところが、本当にすごく素敵だなと思った。

taidan_1912_01_katoそんな熱く語ってくれて、嬉しい!

taidan_1912_01_wataya2人の食い違いや最後の実感っていう流れが、自分も相手の考え方も否定していなくて、よかった!

—— 「女同士」というテーマで書くにあたり、面白さや難しさ、気を付けた部分はありますか?
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女性同士の「共感」を大事にすること

(綿矢りささん)

taidan_1912_01_wataya異性だと、自分の名前を覚えてもらってないとか、食べ方が汚いとか、ちょっとしたことに失望よね、ということを今まで書いてきたんですけど、女性同士だと「失望」よりも「共感」が先に来るというか。

taidan_1912_01_katoそうだね、「共感」が先に来るかも。

taidan_1912_01_wataya相手を好きな人として「崇めすぎない」ように書くことは意識していたかな。だから今回の「生のみ生のままで」の場合は自分より素直というか、まっすぐなタイプの性格の女性を書いた。この2人なら友達になりたいと思えるくらい!

taidan_1912_01_kato主人公の逢衣と友達になりたいと思った!曲げられない強い部分を持っていて、柔らかさもあって、上巻でも好きだったけど、下巻でより好きになった。自分の作品の中では、そんなに友達になりたい登場人物は思い浮かばないけど(笑)。

taidan_1912_01_wataya自分の中にはない強さを持った人を書いたから、一人称だけど自分と違う。だから初めて友達になりたいなと思った。

taidan_1912_01_kato『生のみ生のままで』の主人公、逢衣と彩夏は、タイプは違うけどどちらも魅力的だよね。

taidan_1912_01_wataya私自身は何か行動をする前にすごく考えてしまうんだけど、この2人はそういうところがなくて、すぐ行動するし、あまりびくついたところがない。「怖いものなし」みたいな感じの人たちに憧れるから、そういうのをちょっと理想化して書いてみたんだ。

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taidan_1912_01_katoでも、聡明さも持ち合わせているもんね。向こう見ずではないというか。彩夏を待ち続けている間も逢衣が腐らず頑張っているのがすごい。

taidan_1912_01_wataya うん、あまり意識して書いてたわけではないけど、結果的にはリアルさよりも、こう生きてほしいっていう理想の方に寄っていったかも。

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同じ女性の立場で共感できて、気づきも多いこと

(加藤千恵さん)

taidan_1912_01_kato私の作品は基本的に女性が出てくる話が多い。それは自分がたまたま女として生まれたから、単純に女性の方が書きやすいっていうのがあるんだよね。

taidan_1912_01_wataya共感しながら書けるもんね!

taidan_1912_01_katoそうかも! 今回の短篇集は、書いていて楽しいと感じることが多かった気がする。

taidan_1912_01_wataya千恵ちゃんが今回の小説を書くきっかけになった「お茶の時間」とかすごくリアルだなと思いながら読んだ。こういう人っているし、自分にもこういう面ってあるなって思ったんだよね。

taidan_1912_01_kato嬉しい!

taidan_1912_01_wataya年下の女の子の境遇がすごくリアルな気がして。例えば、お店では真面目にキビキビ働いてくれるのに、他の人の前では違う顔があるような……。

taidan_1912_01_katoそんなに意識して書いたわけじゃなかったけど、そう言われると私って普段からそういうことを感じているのかも。

taidan_1912_01_watayaそうだよね。ある面ではすごくまともに機能しているけれど、裏では少しインモラルで、人生の辻褄が合わなくて逃げ回ってるというのも人間らしいなって。その感じは非日常のはずなんやけど、「ありそうだな」とすごく思った。

taidan_1912_01_kato何かすごいことをしている人でも普通の部分もあるよね。

taidan_1912_01_watayaそうそう。私の今回のテーマでもあると思うんだけど女性同士でも似ているところと全然違うところがあって、その「ズレ」みたいなものを書くというのがすごく面白いし、無限に発見があると感じてる。

—— 綿矢さん、加藤さん、素敵なお話をありがとうございました!  最後に、これから「女同士」のテーマで描いてみたい内容などあれば教えてください!

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女性同士のラブストーリーをもっと掘り下げたい!

(綿矢りささん)

taidan_1912_01_wataya私が1番今このテーマで書きたいのは「女性同士のラブストーリー」かな。

taidan_1912_01_katoおお、ラブストーリー、他にもまた読みたい!

taidan_1912_01_wataya4年くらい前からラブストーリーを描きたなと思ってようやく描けたので、もう1回挑戦してもっと掘り下げて書きたいな。

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母娘の絶妙な関係を描きたい

(加藤千恵さん)

taidan_1912_01_kato私は、母と娘の話を長編でがっつり書いてみたくて。

taidan_1912_01_wataya今回の小説の中の『皺のついたスカート』も決別した母娘の話だったね! お母さんいい人なんだけど愛情表現が下手で、心が開ききれない主人公の気持ちもよく伝わってきた。

taidan_1912_01_kato『生のみ生のままで』のシーンにも度々母娘のシーンがあったね! やっぱり分かち合いそうで分かち合えない部分があるかも。生きている年代も違うし。

taidan_1912_01_watayaひどいことを言われた方は気づいていても、案外その言葉の重さに本人は気づいていない時もあるよね。

taidan_1912_01_kato私も母と仲が悪くはないんだけど、同じクラスにいたら友達にはなってないかも(笑)。グループが違うっていうか。友達だったら許せることでも母親だったら許せないこととか、逆もあるよね。

taidan_1912_01_watayaうんうん、たしかに。母親との関係では、ついわがままが出てしまうよね。母娘のテーマだったら、私は縁が薄い親子とか描きたいな。好き嫌いとか相性以前に、離れて生きた方がお互いにとって良い関係もあると思うから。

taidan_1912_01_katoでもそのくらいの距離感がちょうどいいかもね! 同じ女性同士でも、友達、母娘だったり、色々関わり方が変わってくるね。

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お2人の私生活から小説のお話を通して女同士の関わりの奥深さや楽しさを感じました!お互いを知って行きながら、楽しくコミュニケーションをとっていければいいですね!

本日は素敵な対談をありがとうございました。またのご来店をお待ちしています。

 

撮影/パタヤナン・ワラット(vvpfoto)
取材・執筆/大西マリコ