グルメ漫画家対談!『いつかティファニーで朝食を』マキヒロチさん×『おとりよせ王子 飯田好実』高瀬志帆さん

高瀬志帆さんとマキヒロチさん
  • 高瀬志帆さん
    高瀬志帆
    漫画家。12月21日生まれの射手座。息子・娘・夫の4人暮らし。趣味は散歩、耳かき、音楽。息子と一緒に空手も始める。現在、月刊コミックゼノンで『おとりよせ王子 飯田好実』、エレガンスイブで『イケナイ家族(ファミリー)』、日経DUALで中学受験漫画を連載中。
  • マキヒロチさん
    マキヒロチ
    リアルな人間模様を描いたストーリー漫画から、時計専門漫画、ギャグエッセイなど幅広いジャンルで活動中。現在月刊コミック@バンチで『いつかティファニーで朝食を』、ゴーゴーバンチで『創太郎の出張ぼっちめし』(いずれも小社刊)、ヤンマガサードで『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』を連載中のほか、著書多数。

アマノ食堂に訪れるお客さんの“おいしいお話”を毎週お届けしていきます。

第7回のテーマは「グルメ漫画」

近年ブームのグルメ漫画の中から、TVドラマ化された2作品をピックアップ!今回は、それぞれの作品の作者のお2人にご来店いただきました。

今回は、2013年に放送された『おとりよせ王子 飯田好実』作者の高瀬志帆さんと、2015年10月10日に第1話が放送された『いつかティファニーで朝食を』作者のマキヒロチさんです。作品が生まれた背景や制作の裏話を教えてもらいました!ファンにはたまらない、グルメ漫画家対談です。

高瀬志帆マキヒロチ

- 高瀬さんとマキさん、実は10年来のお知り合いだそうですね。

マキヒロチさんそうなんです。まさか高瀬さんとこんな形で対談するなんて!何だか改まると…変な感じがします(笑)。お互い頻繁に連絡を取り合うわけじゃないですけど、フェスではよくお会いしますよね。毎年フジロックの会場で会って、その後に「今どのあたりですかー?」って連絡を取り合ったり…。でも初めてお会いしてからもう10年も経つなんて早いですね〜。

高瀬志帆さんもうそんなに経つんだね。マキさんには以前、私の連載を手伝ってもらっていたんです。

マキヒロチさんそのときは、高瀬さんのお子さんがまだ生まれたばかりだったような…。

高瀬志帆さんそう!その子がもう中学生になるんですよ。それくらい長い付き合いですね。

 

-では早速、お2人の作品『おとりよせ王子 飯田好実』と『いつかティファニーで朝食を』が生まれた背景を教えてもらいましょう。

高瀬志帆さん前に担当してくれていたのが、おとりよせが好きな編集者さんだったんです。でもその方をモデルにしたわけではく、テーマが「おとりよせ」なのでもっと家に引きこもるようなタイプの、人付き合いが苦手な主人公にしたかったんです。

マキヒロチさん主人公を男性にしたのはなぜですか?

高瀬志帆さん連載している『ゼノン』という漫画雑誌が、当時男性向けの漫画が多かったからです。男性がこの漫画を読んで、料理を真似してくれたら良いなと思って描いていました。

マキヒロチさんそれが今や女性のファンも多いですよね!

高瀬志帆さんそうなんです(笑)。

マキヒロチ

『いつかティファニーで朝食を』は、働く女子の味方!

(マキヒロチさん)

マキヒロチさん私の場合は、担当編集者さんからグルメ漫画の話をいただきました。すでにグルメ漫画はいくつかあったけど、「朝食」をテーマにしたものはまだ誰もやっていなかったし、忙しく生活しているとおろそかなりがちな「朝食」こそ、大事なんじゃないかと思ったんです。

高瀬志帆さんなるほど。

マキヒロチさんちょうど、東京にも「朝食」を出すお店が増えてきたタイミングだったので、自分で作る「朝食」というよりは、「朝食」を食べられるお店を紹介していこうとスタートしました。私が好きな働く女性を主人公にして、そのアクセントとして「朝食」を加えて「朝食で元気になる働く女性」のドラマを描いてみたいと思いました。

高瀬志帆さんこれまでのマキさんの作品を読んでいるから、またなんかおもしろい漫画を描いてるなあって思っていました。

マキヒロチさん高瀬さん、めっちゃ漫画読んでますよね!そうなんです。それまではだいぶ違うテイストの漫画を描いていましたね。失恋したら現れる喫茶店のママとか……(笑)一応働く女性が登場する、という部分では一貫していますが。

高瀬志帆さん今や『いつかティファニーで朝食を』は、働く女子の味方ですね。

マキヒロチさんそうですね。これからも働く女子を応援していきたいです!ところで、高瀬さんは誰の味方なんですか?

 

高瀬志帆マキヒロチ

1人でおいしいものを食べたいと思っても良いじゃないか、って思う

(高瀬志帆さん)

高瀬志帆さん「1人でもおいしいものを食べたい」と思う人の味方、かな。例えばおいしいものを食べるとき、大勢でワイワイしながら食べなくても、1人でおいしいものを食べたいって思っても良いじゃないか、って思うんです。それと、連載が始まってすぐに東日本大震災があって、漫画の存在意義について考えたことがありまして…。ごはんを食べて、人見知りながらもちょっと人とふれあいながら普通に生活する主人公が登場するこの作品を読んで、気分が沈んでいる人たちの気晴らしになったらいいなぁと。

マキヒロチさん『おとりよせ王子 飯田好実』の中で、おとりよせしたものを料理してアレンジするじゃないですか。あれはどういう風に生み出しているんですか?

高瀬志帆さん手当たり次第に作っています。

マキヒロチさんえー!高瀬さんご自身で!?

高瀬志帆さんそうそう。全部自分で作っています。あんまり好きじゃないから食べたくないなって思うものでも。でもそういうものの方が、意外と良いアレンジができたりするんですよ。

マキヒロチさんレトルトカレーをスープにするなんて、考えたことがなかったです!

高瀬志帆さん元々、キムチを買っても汁を捨てないタイプなんですよ。それでご飯もう1杯食べられるじゃんって。

マキヒロチさんすごい!でもそれが楽しいんですよね。

高瀬志帆さんそうなんだよね。マキさんは、お店をどのように選んでいるの?

マキヒロチさん最近はストーリーに合うものを探しています。出張で地方へ行くときに取材依頼をすると、断られることも多いんですよ。

高瀬志帆さんへぇ、そうなんだ。

高瀬志帆マキヒロチ

「うちの店は別にアラサーの女に来て欲しくない」

なんて、言われることも…(汗)

(マキヒロチさん)

マキヒロチさんその土地の書店で、店員さんに「このあたりでおいしいお店知っていますか?」と聞いたりして、意外とバタバタと決めています。

高瀬志帆さん『いつかティファニーで朝食を』の最新刊で、金沢へ行くシーンがあるよね。

マキヒロチさんあれも1人で金沢に行って取材してきました。出張は大体いつも1人ですね。

高瀬志帆さんえ!1人で…!? 取材交渉とか大変じゃない?

マキヒロチさん大変ですよ〜。漫画で取り上げたいって交渉したら「うちの店は別にアラサーの女に来て欲しくないから」なんて言われたことも(汗)。高瀬さんは、どんな風におとりよせの商品を選んでいるんですか?

高瀬志帆マキヒロチ

高瀬志帆さんたくさん試食をして、その中から担当編集者さんと一緒に選ぶことが多いですね。おとりよせってどれもハズレがないんですけど、取り上げるには、おいしいだけじゃなくて、ひとひねり欲しい。ちなみに、今まで紹介したおとりよせが「美味しくなかった」というクレームは1つもないんですよ。だんだんハードルは上がっていきますね。

マキヒロチさん美味しさ以外に、アレンジができるっていうのもポイントですもんね。

高瀬志帆さんそうですね。だから、お菓子を取り上げることは少ないです。アレンジが難しいので。

マキヒロチさんそして白いものほど、絵だとヴィジュアルも伝わりにくいですよね。白いものって、すごく難しくないですか?

高瀬志帆さん難しい!豆腐とかね。

マキヒロチさんそうそう!あと、おかゆとか。

高瀬志帆さんあ〜 朝食におかゆとかよく出てきそう。

高瀬志帆マキヒロチ

マキヒロチさんそうなんですよ。料理はアシスタントが担当することが多いんですけど、白い食べ物にはトーン貼りすぎないように注意してもらっています。

高瀬志帆さんグルメ系の漫画だと、アシスタントを食事に連れて行く人も多いですよね。

マキヒロチさんそうですね。私もアシスタントを連れて行きます。例えばラタトゥーユなどの、男性アシスタントさんになじみのないものを頼む場合は、玉ねぎと、なすと…と、入っている材料をいちいち伝えないとわからないので。

高瀬志帆さん食いしん坊じゃないと楽しめないかもね。

マキヒロチさんそうなんです。「マスカルポーネって何ですか?」と聞かれても説明しにくいんですよ。女の子だったらある程度わかってくれますけどね。

高瀬志帆さんじゃあ男の子のアシスタントだと説明が大変?

マキヒロチさんマスカルポーネとかバルサミコとか、何回言っても覚えてくれませんね(笑)。

麴町なんてんカフェ料理

高瀬志帆さん取材も大変そうだけど、私は取材に行くことがあまりないからうらやましいなぁとも思う。築地にも行ったことがないから行ってみたい。あと、地方に行って「おとりよせできないもの」を食べたりもしたいですね。

マキヒロチさん取材は、大変ですね…。地域によっては、断られる確率が高いところがあります。たまたま運が悪かったのかなぁ。南の方の地域は、断られることが少ないような気がします。

高瀬志帆さんおとりよせも、たまに断られることがありますよ。オーダーが急に増えると、対処しきれなくなるからって。でもね、やっと第6巻で日本の全都道府県を制覇しました!最後は愛媛県と茨城県だったかな。

マキヒロチさんすごい!最後は難しかったですか?名産がないとか。

高瀬志帆さん難しいのは“選択”ですね。例えば、大阪府は特に食に厳しいから、お好み焼きとかたこ焼きなどの王道メニューは避けて、あえてタイ料理にしました。北海道もおいしいものが多すぎて悩みましたが、小さいチーズケーキにしました。

マキヒロチさんなるほど。高瀬さんは、食べるシーンで気をつけていることはありますか?私はキャラクターがたくさんいるから良いですけど、飯田君ひとりで大変じゃないですか?

高瀬志帆さん食べ方もそうだけど、表現も難しい。もう「濃厚」とかいう表現はありきたりで書けない。その料理の美味しさや特長を表すベストな表現をいつも模索していますね。ちなみに、さっき仕上げてきた原稿の“イカのお腹にシシャモの卵を詰めた食べ物”は、「華麗なる養子縁組」という表現にしたり(笑)

マキヒロチさんもう彦摩呂さんの域ですね!(笑)

高瀬志帆さんマキさんは、キャラクターによって食べ方を変えたりしているの?

マキヒロチさん私は毎回ロケーションが違うので、あまり変えていないですね。高瀬さんの漫画のロケーションって…。

高瀬志帆さん大体が「家」ですね。職場もいつもの同じオフィスだし。角度を変えたりはするけど。

マキヒロチさんそれはなかなか大変ですね。

高瀬志帆さんマキさんはロケとか行くから大変ですよ。漫画を制作する過程も苦労しているポイントも、やっぱりお互い違うんですね。

 

-ヒット作品が生まれた背景に、そんな苦労があったとは!『いつかティファニーで朝食を』『おとりよせ王子 飯田好実』、どちらの作品も実在のおとりよせやお店が描かれているので、漫画の中で紹介されている料理を自分でも味わうことができるのが魅力的です。お2人にこれまでに描いた中で印象的だった、おとりよせやお店についてお聞きしました。

高瀬志帆マキヒロチ

「読者の方から反応が多いのは“牛とろフレーク”」

(高瀬志帆さん)

高瀬志帆さんどれもすごく美味しかったのですが、以前、吉祥寺にある東急百貨店の催事場で『おとりよせ王子』のフェアを開催していただいたことがありました。そのときに、漫画で描いたお店がたくさん出店していたのですか、たくさんおみやげをくださって。中にはお母さんみたいな人もいて「これも食べな」「あれも食べな」とひと通りいただきました。しかもどれもすごくウマい!これまで細々と漫画を描いてきたつもりが、世の中の経済活動の循環の中にちゃんと入っていたんだなぁ、役に立ててよかったなぁと思いましたね。

マキヒロチさんそうなんですね。読者の方から反応が多いのは何ですか?

高瀬志帆さん牛とろフレーク」かな。

マキヒロチさんそれ、買いました!

高瀬志帆さん買った?あれは漫画描いている時の追い込みのお供として、非常に優秀ですよ。あとはやっぱり「卵かけごはん」かな。

マキヒロチさんうーん、いいですね!私は「烏骨鶏のデニッシュ」が気になりました。

高瀬志帆さんあれは、残念ながら生産中止になっちゃったみたい。マキさんは、印象に残っているお店はありますか?

マキヒロチ

「サンドウィッチ屋の“カリーナ”が大好き!」

(マキヒロチさん)

マキヒロチさん私は上井草の「カリーナ」というサンドウィッチ屋さんが好きです。すごくたくさん種類があって、朝早くから開いていてサイフォンコーヒーと一緒に店内でも食べられるんです。家族経営で、社会人になった息子さんが家に戻ってきてお店を手伝っているところも、あたたかい感じがして大好きです。

高瀬志帆さんほのぼのするね。読者の方から反響が大きかったのは?

マキヒロチさんネットなどで「行ったよ」と書かれている中では、第1巻の「グッドモーニングカフェ」が多いかな。あと、築地の「かとう」という定食屋さん。

高瀬志帆さんマキさんは、おとりよせはする?

マキヒロチさんたまにしますよ。最近おとりよせしたのは「ゼリーのイエ」です。何年もチャレンジしていたんですけど、ぜんぜん予約が取れなくて。毎週金曜日の9時から売り出されるのですが、瞬殺で売り切れてしまうんですよ。(スマートフォンで写真を見せながら)カラフルな、こんな感じのゼリーです。

高瀬志帆さんかわいい!

マキヒロチさん昔ながらのかためのゼリーで、すごくおいしいんですよ。10個以上のセットをほとんどひとりで食べてしまいました。

 

【information】

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マキヒロチ著 『いつかティファニーで朝食を』 第7巻
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-おいしいそうな食べ物の話をしたあとに、〆の一品のお時間。本日の〆は、寒い季節に食べたくなる「ビーフシチュー」と「クリームシチュー」です。

マキヒロチさんお湯かけるだけなんですか?すごい!

高瀬志帆さん世の中にはまだ、知らないものがいっぱいあるね。…おお、本格的だ!

マキヒロチさんパセリも入っているんですか?おしゃれですね。

高瀬志帆マキヒロチ

高瀬志帆さんこれ、1袋しか使ってないんですよね!?

マキヒロチさんすごく濃厚ですね。なんかよく薄いスープとかありますけど、全然違いますね。

高瀬志帆さんフリーズドライって、すごいな〜。

マキヒロチさんおいしいですね。

高瀬志帆さんさっきごはん食べたのに、ペロリと食べられますね。ごちそうさまでした!

 

-とても楽しいトークをありがとうございました。またのご来店をお待ちしています!
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企画協力/鯰組、なんてんcafé

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