パンツェッタ・ジローラモさん×サヘル・ローズさん|海外から見た「和食」の魅力

サヘル・ローズさんとパンツェッタ・ジローラモさん
  • パンツェッタ・ジローラモさん
    パンツェッタ・ジローラモ
    イタリア ナポリ出身。1962年9月6日生まれ。建築一家の三男として、ナポリ建築大学在学中に亡き父の後を継ぐ。主に政府からの依頼を受け、歴史的建造物の修復にたずさわる。1988年から日本在住。以降、多数雑誌や著書、NHK「イタリア語」講座の番組などで祖国イタリアについて幅広く紹介。2006年、本国より騎士の称号「カバリエレ~イタリア連帯の星勲章」を贈られる。
  • サヘル・ローズさん
    サヘル・ローズ
    イラン出身。1985年10月22日生まれ。8歳から日本在住。通っていた小学校の校長に日本語を学び高校時代から芸能活動を始め、J-WAVEでラジオDJデビュー。大学と専門学校を卒業した現在は、情報番組のキャスターや、リポーター、バラエティ番組や女優業など幅広く活動を展開中。

東京下町のとある街角にひっそりと佇むアマノ食堂。この店に訪れるお客さんの“おいしいお話”をお届けしていきます。第13回のテーマは「和食」について。

私たちが普段何気なく食べている和食は、2013年にユネスコの無形文化遺産に登録され、今世界中から注目が集まっています。

ゲストは男性ファッション誌『LEON』のモデルの他、執筆家や飲食店の経営者としての顔を持つパンツェッタ・ジローラモさんと、バラエティ番組や女優業など幅広く活躍されているサヘル・ローズさん。日常生活でも「和食」は欠かせないと語る海外出身のお2人から見た“和食の魅力”について聞いてみましょう。

サヘル・ローズとパンツェッタ・ジローラモ

初めて「和食」を食べた時の印象は?

 

-まず、海外出身のお2人が日本の食文化に初めて触れた時の印象はどうでしたか?

パンツェッタ・ジローラモさん実は和食とイタリア料理は共通点があるんです。食材の風味を活かせるところが似ていて。例えば、食材からだしをとるところとか。

サヘル・ローズさんどんな食材を使うんですか?

パンツェッタ・ジローラモさんリゾットを作る時にもだしをとるんですよ。日本で鰹(かつお)や昆布を使うように、イタリアでも野菜でだしを取ることがありますね。にんじんやセロリ、玉ねぎを入れて。あとは、麺文化が根付いているという共通点も!イタリアではパスタを茹でる時に麺に少し堅さを残した「アルデンテ」という茹で方をしますが、日本のうどんや蕎麦にも麺にコシがあるでしょ。だから日本の方もパスタを茹でるのは得意なんじゃないかな(笑)。共通点がたくさんあるからイタリア人にとっても和食って馴染みやすいものなのかなって思います。

サヘル・ローズさんたしかにそう言われてみると。私はイラン出身なんですが、中東料理は煮込み料理が多くて、食材を活かすというよりも味付けの濃厚さや香りを楽しむんです。だから、日本で初めて和食を食べた時は正直ちょっと味が薄いな…と感じて自分で塩をまぶしたりしていましたね。

パンツェッタ・ジローラモさん同じ!私も最初はそうでしたね〜。

サヘル・ローズさん「ソースを忘れたのかな?」とか「炒め忘れたのかな?」って思って(笑)。すべてが薄すぎるなあ…と思ったのが正直な印象ですね。だけど、時間が経つにつれて、五感で楽しむのが和食なんだと気付いて。単に味だけじゃなくて、食べた時の食感や音、美しい盛りつけとか。

パンツェッタ・ジローラモさんそうそう。私も最初は和食の味がわからなかった。でもサヘルさんがおっしゃるように、食べていくうちにだんだんと和食のおいしさに気付くようになりました。

 

パンツェッタ・ジローラモ

 

-お2人とも最初は「味が薄い」という印象を持たれていたんですね。どういったキッカケで和食を好きになったんでしょうか?

サヘル・ローズさん日本って、土地にすごく恵まれていて、その場所にしかない食材や味わいを堪能できるんですよね。同じにんじんでも、育てる農家や環境によって甘さや歯ごたえが違ったり。そこに和食の面白さがあるなって思います。

パンツェッタ・ジローラモさんイタリアでも、日本料理屋がだんだん増えてきていて。毎年ヨーロッパで開催される「Japan Expo」でもいろいろな和食が紹介されているけど、やっぱり注目されているのは「お寿司」や「天ぷら」。定番なものも良いけど、他の和食も知ってもらえると良いよね!

サヘル・ローズさん和食って、気取らなくてもいい下町の味・・・たとえば佃煮や漬物など魅力的なものがたくさんありますよね。あと、とろろもすごく好き!素朴さの中にある和のおいしさだなって。ジローラモさんは日本の食材で実際に食べて衝撃を受けたものってありますか?

パンツェッタ・ジローラモさん私が育ったイタリアのナポリという港町には、魚介料理のお店がたくさんあるんですけど、なかには冷凍ものとか新鮮なものが使われていないところもあって。だから、初めて日本で刺身を食べた時は鮮度の高さに驚きましたね。食材の持ち味を最大限に引き出すことができるのが和食の面白いところだなって。

 

サヘル・ローズ

「食材本来のおいしさ。それが“旨味”なんだと思う」

(サヘル・ローズさん)

サヘル・ローズさんたしかに!私も日本に来てから「活きが良い」とか「鮮度が良い」などの言葉を知りました。あとは「旨味」という表現も日本ならではですよね?

パンツェッタ・ジローラモさんそうそう!「旨味」ね。今、ヨーロッパでも流行の言葉です。最近はみんなその言葉を使っていますね。

サヘル・ローズさんその「旨味」という言葉も、和食を通して知ることができたんです。「おいしい」だけでなく、食材本来のおいしさ。それが「旨味」なんですよね。初めて聞いた時の衝撃は今でも忘れられません。

 

パンツェッタ・ジローラモ

パンツェッタ・ジローラモさんあと、日本では食材を無駄にしない。イタリアにいた頃は、魚の頭なんて食べたことがなかったけど、日本では丸ごと食べるのでびっくりしました!

サヘル・ローズさんマグロもカマまでおいしく食べられますしね。カマには脂が乗っていて旨味が凝縮されてるというか。

パンツェッタ・ジローラモさん海老の頭やしっぽも食べることあるよね?

サヘル・ローズさん私はお酒を飲めませんが、海老の頭をお酒に入れるとおいしいらしいですね。

パンツェッタ・ジローラモさんそれは、なかなか渋いですね(笑)。

 

—日本で暮らすようになってから、徐々に日本ならではの味わいを堪能できるようになったというお2人。普段の日常生活では、どんな時に和食を食べたくなりますか?

サヘル・ローズとパンツェッタ・ジローラモ

サヘル・ローズさん海外に行くと、より一層和食は恋しくなります。今となっては和食が大好きで、 特に日本米は絶品ですね。日本に来る前によく食べていたインディカ米は食感がパサパサしているんですが、日本のお米はもっちりと、程よい粘りっけがありますし、一粒一粒に旨味がある。人生で最後に食べたいのは、日本米ですね(笑)。

パンツェッタ・ジローラモさん同じです。私も長く日本にいて体が和食を求めてしまうから、もう毎日イタリアンは食べられないかな(笑)。サヘルさんは、これまで食べた和食の中で忘れられない味はありますか?

サヘル・ローズさんありすぎて迷いますね。でも、やっぱり「だし巻き卵」かな!隠し味で鰹節を使ったり昆布を効かせたり、だし巻き卵って家庭や店それぞれの味があるというか。和食って、これは何の食材を使って、どんな調味料で味付けして…とか、一口食べただけではわからないんだけど、香りが余韻としてしっかり残る。う〜ん…やっぱり一つには決められないですね。「ほうれん草の胡麻和え」や「ひじきのきんぴらごぼう」を食べた時も感動しました。あと、「切り干し大根のおひたし」とか。挙げたら本当にキリがない!ジローラモさんは忘れられない味、ありますか?

 

パンツェッタ・ジローラモ

パンツェッタ・ジローラモさん私は、日本に初めて来た時に国産のお肉を食べて衝撃を受けました。柔らかくて口の中で溶けるんですよね!フィレンツェで、現地の一番柔らかい牛肉を日本の友人に食べさせたけど、あまりびっくりしてくれなくてね~。日本のお肉はもっと柔らかいから。その時、なるほどな…って。あとは昆布だしも。以前、昆布を一番最適な条件で保存している九州のとある低温倉庫に行って、そこに保存されている昆布でだしを作ったことがあるんだけど・・・あの味も忘れられないな。

サヘル・ローズさん昆布も奥が深いですよね。以前函館に昆布漁を見に行った際、現地の漁師さんに「海の環境は毎年変わるから昆布の香りや味も年々変化する」というお話を聞きました。あと、和食に欠かせないものなので常に手元にあることが当たり前になっているけど、食材が自分たちの所に届くまでに関わっているたくさんの方へ感謝の気持ちを忘れてはいけないなと感じましたね。

パンツェッタ・ジローラモさんそうですね。僕も仕事で地方に行く機会があって、そこで生産者をはじめいろんな人や食に出会ったことが、和食の奥深さを知るキッカケになりました。

 

—仕事で地方を訪れ、その土地に根付く食文化と触れ合う機会も多いお2人。海外の方に「日本に来たら、これはぜひ食べたほうがいい!」とおすすめしたい“イチオシの和食メニュー”を教えてください。

サヘル・ローズとパンツェッタ・ジローラモ

「アニメなど日本独特のカルチャーを通じて、

和食が世界に広がっていくのは面白い」

(パンツェッタ・ジローラモさん)

サヘル・ローズさん私はやっぱり定食かな。鯵や鮭とかの焼き魚をおすすめしたいです。商店街にあるような昔ながらの定食屋さんで白米、漬け物、みそ汁と一緒に食べてほしい。

パンツェッタ・ジローラモさん行きつけのお店があるんですか?!

サヘル・ローズさんありますよ。お酒は飲みませんが、アメ横のガード下にある大衆居酒屋「大統領」は昔からよく行きますね。赤提灯があって、のれんをくぐるとお店のおじさんが気さくに「よっ!」って挨拶してくれて。あと、浅草の「煮込み通り(ホッピー通り)」には海外から来た友人を連れていってあげるんですけど、とても喜んでくれます。日本の煮物文化はすごいですよね、味がしっかり染み込んでいて!日本に来たら思う存分和食を堪能してほしいですね!そういえば、ジローラモさんはご自身でお店をされているんですよね?

パンツェッタ・ジローラモさんそう、「あんど西麻布」という九州料理屋です。イタリアには鍋物の文化がないんですけど、以前九州を訪れた時に食べた水炊きと馬刺しがすごくおいしくて。それで、東京で同じコンセプトでお店を出せたらいいなと。馬刺しは熊本から新鮮なものを直送してもらっていますよ。

サヘル・ローズさんすごいですね!

パンツェッタ・ジローラモさんでも、イタリアをはじめ鍋文化がない国って結構あるから、海外の友達に水炊きを食べてもらうにはまず「食べ方」から教えないといけないんだよね。初めて食べる料理って新鮮だけど、食文化が違うと食べ方がわからなくて戸惑ってしまうことがあるでしょ?自分も日本に来たばかりの時は何もわからなかったから。だから、料理を提供するだけじゃなく食事の仕方とかも教えてあげられたら嬉しいよね。

サヘル・ローズさん食べ方がわからないと味まで堪能できないもんね。

パンツェッタ・ジローラモさん海外の人に和食を知ってもらうには日本のカルチャーを絡めるのもいいと思う。特に日本のアニメや漫画ってヨーロッパですごく人気だから。以前は日本の食べ物の名前はイタリア語に翻訳されていたんだけど、今では「SUSHI」とか「TAKOYAKI」でも通じるからね。日本独特のカルチャーを通じて、いろんな和食が世界に広がっていくのは面白いよね。

 

サヘル・ローズ

「日本の四季を楽しめる和菓子は、まるで“食のカレンダー」

(サヘル・ローズさん)

サヘル・ローズさんたしかに。あと、海外の友人には和菓子もおすすめかな。和菓子職人さんの、繊細で細やかな技術や日本の四季を楽しめますよね。例えば、和菓子屋さんの店頭に桜餅が並んでいると、「春が来るな〜!」と、季節を感じられるのも魅力だと思います。洋菓子に四季を感じることってあまりないので、和菓子はまるで“食のカレンダー”のようだなって!見た目の芸術性も高いので、海外の友人にお土産で和菓子を渡すと、「美しすぎて食べるのがもったいない…」って言われることがあります。

パンツェッタ・ジローラモさん僕も和菓子は大好きです。以前、NHK京都放送の「京都上がる下がる」という番組をやっていた時、旬の食材を活かしたさまざまな京菓子に触れる機会があって。抹茶のソフトクリームもおいしかったな。甘さがしつこくないから1個食べるともう1個…って(笑)。何個食べても飽きない味ですよね。

 

 

ーさて、そろそろ〆のお時間。最後に、日本の食文化を堪能する楽しさを知り尽くした海外出身のお2人に、日本人に伝えたい「和食」に対する想いや魅力を聞きしました。line03

パンツェッタ・ジローラモ

親から子供へ、世代を超えて受け継がれる味を大切に

(パンツェッタ・ジローラモさん)

パンツェッタ・ジローラモさん今の日本はとても便利で、コンビニやレストランでおいしいものが簡単に手に入ります。だけど、特に学生さんや若い人には、身近にある家庭の味こそ大切にしてほしいですね。例えば、お母さんが作るみそ汁のおいしさとか。親から子へ、世代を超えて受け継がれる味を大切に、しっかりと味わっていけると良いなと思います。

サヘル・ローズさん和食って、昔の人たちの知恵がたくさん詰まっていますよね。切り干し大根の天日干しや、漬け物も樽桶にたくさん漬けて長期保存できるようにしたり。昔のお母さんたちの知恵がそれぞれの家庭の味になっているのかもしれないですね。

パンツェッタ・ジローラモさん調理方法もすごいですよね。海外のシェフも、日本に来ていろんな刺激を受けていました。同じ料理でも、無駄なく食材を活用するアイデアや日本の調理テクニックを使うとさらにおいしくなる。

サヘル・ローズ

和食には、日本人の謙虚さや奥ゆかしさが詰まっている

(サヘル・ローズさん)

サヘル・ローズさん海外では豪華に盛りつけをしたり見栄えを優先しがちだけど、和食って一見とてもシンプル。でも、そこには日本人の謙虚さや奥ゆかしさが詰まっているのかな。日本の良さをそのまま表現している気がします。もちろん、日本でも海外の食文化を取り入れることはあると思うんですけど、和食の原点を忘れないでほしいなって。ちゃぶ台の上におみそ汁とおにぎりが1個あるだけで食事として成立するし、なんだかホッとする…。そんな気取らないところが和食の魅力ですし、和食のそういう所が世界中から受け入れられているのかな。

 

ー本日の〆は、なめらかな豆腐の口どけに味噌の風味が際立つ「いつものおみそ汁   とうふ」です。

サヘル・ローズさんとパンツェッタ・ジローラモさん

サヘル・ローズさん香りが良いですね~。

パンツェッタ・ジローラモさんうん、おいしい。以前、二日酔いの時におみそ汁を飲んだらすごく体調がよくなったんですよ。本当に効果があるんだ!って驚きました。

 

サヘル・ローズ

サヘル・ローズさん私、おみそ汁大好きなんです!飲むとホッとする。具材やだし、味噌によって味が七変化するのが面白いですよね。あと、豆腐のおみそ汁って味噌も豆腐も大豆からできているじゃないですか。同じ豆がこうなるんだ!ってびっくり。この1杯に、いろんな発見や面白さが隠されていますよね。

パンツェッタ・ジローラモさんそうだね。おみそ汁1杯で体もあったまりますね〜。

 

ー 楽しいトークをありがとうございました。またのご来店をお待ちしています!

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企画協力/蓮月